治療中の暮らしサポート・ケア

公的医療保険 民間医療保険Q&A:保険の特徴を上手に生かすために押さえておきたい5つの疑問

2015年10月28日

Q4.A病院で手術して入院し、約8万円支払いました。その後、同じ月にA病院の外来通院で抗がん剤治療を受け、再度窓口で5万円請求されました。
私の場合、「限度額適用認定証」の提出により、1カ月に最高でも約8万円しか医療費の自己負担はないと聞きましたが、なぜそれ以上請求されるのでしょうか?

A.外来と入院の費用は別々にカウントされます。また複数の病院にかかった場合もそれぞれ請求されます。

高額な医療費が予想されるときは、限度額適用認定証を事前に保険医療機関に提出しておけば、限度額(所得によって異なる)を超えた分の治療費は請求されません。最終的にはこれに間違いはないのですが、「限度額適用認定証」を医療機関に提出しておいても、一度立て替えが必要なケースがあることを知っておく必要があります。

その1つが、この質問のようなケースで、ひと月のうちに、同じA病院で入院と外来で治療を受けた場合、外来と入院の治療費は別々に請求されるシステムになっています。ですから、どちらかの治療費だけですでに限度額を超えたとしても、また、両方を合算して限度額に達したとしても、請求に応じて、治療費を一時的に負担しなければなりません。

また、ひと月のうちに複数の病院にかかった場合、例えば、A病院ですでに限度額を超えたから、B病院では支払わなくてもいいかというと、そういうわけではありません。A病院では限度額以上の請求はされませんが、B病院やC病院では支払わなければなりません。ただし、B病院やC病院に支払った1カ月の治療費が、2万1000円を超える場合には、A、B、Cの治療費を合算して、限度額を超えた分(質問者の場合は、約8万円を超えた分)については、返金されます(70歳未満の場合)。

余分に支払った医療費については、後で自動的に返金してくれる場合もあれば、返金には申請が必要な場合もあり、加入している公的保険制度によって異なるので、担当窓口に問い合わせてみてください。

vol.7_sujikara_04

 

Q5.一度がんを経験した人でも、要件を満たせば入れる保険があると聞きました。
入れる保険があったら入っておきたいのですが。

A.がんを患った人でも、 入れる保険はあるが、一定の条件があり、保険料も割高。

がん患者さんが加入できる保険には次の3タイプがあります。

①無選択型保険
医師の診査や健康告知も不要です。保険料はそれなりに高く、過去にがんに罹患したり、今、がんの治療を受けている人への保障はしないので、残念ながらがんの再発や転移の備えにはなりません。

②引受基準緩和型保険
加入条件が緩和されていて、がんの場合は、5年以内に診断確定、治療などのないことを条件とする商品がほとんど。ただし、加入後90日間は保障の対象外で、1年以内に再発・転移等があっても、保険金が半額しか支払われません。保険料は一般の医療保険に比べると1.3倍から1.7倍と割高です。

③がん経験者向けがん保険
がん経験者向けに開発されたがん保険ですが、現在、取り扱っているのは2社のみ。このうち1つは、乳がん経験者限定です、もう1つは、がんで入院、手術などを受けてから2年超経過していれば加入できるなど、比較的、加入条件がゆるやかで保険料も割安です。

vol6_suji03黒田尚子(くろだ・なおこ)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CNJ(キャンサーネットジャパン)認定乳がん体験者コーディネーター。大学卒業後、大手シンクタンク勤務を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。講演や執筆、個人相談を中心に活動。2009年、乳がんと診断され、翌年、右乳房全摘手術を受ける。近著に『がんとお金の本─がんになった私が伝えたい58のアドバイス』(株式会社ビーケイシー)。(取材時現在)
前のページへ

同じシリーズの他の記事一覧はこちら