治療中の暮らしサポート・ケア

抗がん剤治療に伴う頭髪の悩みをサポート クラウドファンディングで医療用ウィッグの写真集も発行しました

2015年9月14日

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理美容の観点から、がん患者の気持ちをサポートする「ふくりび」

医療技術の進化で多くのがん治療法が確立されつつある昨今だが、一方でがん患者が日常生活に不便を強いられる場面があることは否めない。
代表的なものが、抗がん剤治療の副作用によるもの。とりわけ、頭髪の「脱毛」は治療を受ける患者にとって深刻な問題だ。周囲の目が気になる、闘病中であることが知られ精神的な負担を感じるなど、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまう。

こういった、抗がん剤治療にまつわる頭髪、身だしなみをサポートするのが、「NPO法人 全国福祉理美容師養成協会(ふくりび)」だ。「誰もがその人らしく、美しく過ごせる社会の実現を目指して」を理念に、理美容の力で人々を元気に、笑顔にするための活動を20年にわたり行っている。

「愛知県日進市でサロンを営む理事長の赤木勝幸が、開業時から近隣の介護施設などで訪問理美容を始めたのがきっかけで、2007年にNPO法人化しました」と話すのは、岩岡ひとみ事務局長。今日に至るまで、高齢者・障害者などの介護施設・自宅への訪問理美容を中心に、訪問理美容を行う福祉理美容専門理美容師の養成及びコンサルティング、知的障害者の身だしなみ支援などを展開し、介護施設の利用者・入居者を対象にした「ビューティキャラバン」は、2009年から毎年開催する大イベント。ファッションコーディネイト&ヘアメイクをした高齢者をプロカメラマンが撮影するという取り組みは、好評を博している。

5年前から始めているのが、がん患者・脱毛症患者向けの医療用ウィッグの製造・販売事業だ。利用者の9割が女性で、30~40代の子育て世代の利用が多くを占めている。
「『脱毛で悩んでいる方にウィッグを作れないか』と訪問先の看護師から相談を受けたのが発端です。そこで既存の医療用ウィッグをリサーチしたのですが、高額であったり、低価格であっても品質が良くないなど、容姿について心を痛め、医療費も負担している患者様にお勧めできるものはありませんでした。ならば、理美容のプロとして、こういった悩みに応えたいと考え製造・販売に踏み切ったのです」
こだわったのは、人毛100%で不自然さはなく、パーマやカラーができるということ。耐久性にも配慮し、300回のシャンプーテストも実施した。「毎日洗っても1年近く、週3回程度の洗髪を推奨していますから、途中で買い変えることなくご利用いただけます」。

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医療用ウィッグこそ“自然さ”が大事 福祉理美容を当たり前のサービスに

価格も、ショートからセミロングに対応できる「ミディアムレングス」が6万円(税別)からと、一般的な製品の半額近いプライスを実現した。
理念に共感した全国75の理美容室とはパートナーシップも結び、美容室で作る医療用ウィッグ業界で、提携美容室数は全国1位。常時、店舗に在庫があり、利用者はその場でウィッグを着用しながらプロの手でスタイルを整えてもらえる(カット・カラーなどの施術料は別途有料)。

「パートナーサロンには、脱毛の知識やウィッグの使い方など研修を受けた上で加盟いただく仕組み。ご利用者の相談を受けながらカウンセリング、施術を行っていきます。NPOふくりびでも、看護師が窓口となり『個室で相談したい』などご要望に沿ったサロンをご紹介しています」
利用者の反応は好評で「ウィッグとはまったくわからない」「安心して人に会える」など、脱毛が原因で引きこもりがちになっていたネガティブな気持ちの解消に役立っている。

がん患者だけではなく医療関係者にも、もっと知ってほしいという思いから、インターネット上で資金を集めるクラウドファンディングサービス『READYFOR?』を通じて支援を募り、医療用ウィッグの写真集『がん闘病中の髪・肌・爪の悩み サポートブック』も発行した。約80日間の募集で250人の支援、目標金額350万円を上回る、377万円が集まった。「理美容関係者や医療従事者、がん患者さんやそのご家族といったたくさんの方々にご支援いただき実現することができました」
発行したサポートブックは、全国のがん拠点など500の医療機関へ寄贈。がん支援室の担当者やソーシャルワーカーから、「こういった情報が欲しかった」という声も届いた。

今後の活動も精力的だ。「年内中には、子ども用の医療用ウィッグも作り、クリスマスには小児病院で仮装やおめかししたお子さんと親御さんの撮影イベントも行います」という計画も。11月には、愛知県がんセンター(名古屋市)の近くに、相談窓口や試着スペース、ネイルケアも兼ね備えたウィッグセンターもオープンする見通しだ。
「最終的な目標は福祉理美容を一般化、当たり前のサービスにすること。その時、我々の役目は終わりを告げると考えています。1日も早く訪れるように、関心をもっていただける活動にまい進します」

【がん闘病中の髪・肌・爪の悩み サポートブック】英治出版

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【問い合わせ先】
NPO法人 全国福祉理美容師養成協会
TEL:052-801-5203
URL:http://www.fukuribi.jp
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