がん免疫療法Q&A

Q.免疫細胞治療にはエビデンスがなく、治療効果が証明されていないといわれていますが、本当でしょうか?

回答者:後藤重則(ごとう・しげのり)
医療法人社団 滉志会
瀬田クリニックグループ統括院長

A.免疫細胞治療に関する臨床研究は、国内、国外で広く行われており、有効性を示す論文も数多く存在します。それらの論文によるエビデンスについて説明したいと思います。

まず、医学でいうエビデンスとは、治療効果の科学的根拠のことを指します。エビデンスは単純にある、なしということではなく、偏りが少なく信頼性がどの程度高いかという観点で、7段階にランク分けされています(図1)。

 

免疫細胞治療の治療効果
※「システマティック・レビュー」とは、世界中の研究データ(論文)をくまなく探して、内容をまとめ、大きな結論を出したもの。治療効果を証明するエビデンス(科学的根拠)としては、最も信頼できるものだといわれている。

 

一般的に信頼性が高いとされるのが、ランダム化比較試験(無作為比較試験ともいう)で、くじ引きで治療を受ける人、受けない人を振り分け、双方の結果を調査する試験です。医薬品承認の際に、製薬会社による企業治験として行われるのが一般的で、全生存率(治療後に一定期間経過した時点で生存している人の割合)による評価がすぐれています。ある意味実験的な試験であることと、長い期間と莫大(ばくだい)な費用がかかるため、1医療機関などが簡単にできる試験ではありません。

そうしたなかでも、過去に免疫細胞治療の再発予防効果を示す、2つの有名なランダム化比較試験(Takayama T et al. : Lancet 356: 802, 2000、Kimura H et al.: Cancer 1;80:42, 1997)が存在します。それぞれ、肝臓がんと肺がんの手術後の再発予防治療として免疫細胞治療を行った場合、再発率を大きく低減させたというものです。これについては、最近もあらためて追試が行われ、同様の効果があったことが2015年に論文発表されています。(LEE JH et al.: Gastroenterology 48:1383, 2015、Kimura H et al.: Cancer Immunol Immunother. 64:51, 2015)。

 

7000人近い規模のランダム化比較試験で治療の有効性が結論付けられた

さらに、免疫細胞治療の試験結果が最も多く存在する肺がんについては、ランダム化比較試験より信頼性が高い最上位のシステマティック・レビューとして、過去に報告された免疫細胞治療や、がんワクチンの試験結果がまとめられ、2016年に報告されました(Efficacy of Tumor Vaccines and Cellular Immunotherapies in Non–Small-Cell Lung Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis)。

掲載された「JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY」は、米国臨床癌学会(ASCO)の機関誌で、世界でも最も権威あるがん治療に関する学術誌です。8つの免疫細胞治療と10のがんワクチン、合計18の免疫療法のランダム化比較試験における6756人の患者さんについて解析した結果は、免疫細胞治療やがんワクチンが、がんの進行を抑えて生存期間が延長されるというもので、さらにはがんワクチンより免疫細胞治療がより有効であると結論付けています。

この解析は、免疫チェックポイント阻害薬との併用において、これらの免疫療法が有望な候補となり得るかどうかを調べることを念頭において行ったとされています。

 

免疫サイクルを理解した科学的アプローチが重要

今、世界的に注目されている免疫チェックポイント阻害薬も、血液がん以外では効果のある人は全体の10~30%程度です。7~9割の人で効果がない一因として、患者さんの体内にがんを攻撃するリンパ球が少ないため、チェックポイント阻害薬でがんのバリアを取り去っても攻撃優位にならない、ということが考えられています。

そこで、免疫細胞治療などで強力なリンパ球を投与し補うことで、奏効率が高まるのではないかと考えられます。がんに対抗するためには、体内の免疫サイクルがきちんと回ることが必要です(図2)。そのために、免疫療法同士を組み合わせるといった研究も、これからどんどん行われていくはずです。

 

 
今、すべてのがん患者さんが、承認された標準治療だけで治るのであればよいのですが、残念ながら標準治療が奏効せずに困っている患者さんや、高齢であったり、他の疾患を抱えていて、副作用の強い治療ができないという患者さんも少なからずいるのが実情です。

免疫細胞治療は、現段階では医薬品承認されていませんが、治療効果を示す研究結果や論文は他にも多く存在しています。これらを根拠に我々は、患者さんの希望があれば、きちんと正しい説明を行ったうえで、現在可能な最高品質の細胞を提供しています。

ただし、免疫療法を行う医療機関の中には、治療効果などについて正確な説明を行わなかったり、安全性や技術面で不確かな治療を行っているところもあるようで、憂慮すべき問題と考えています。

 

後藤重則
医療法人社団 滉志会
瀬田クリニックグループ統括院長
ごとう・しげのり●1981年、新潟大学医学部卒業。県立がんセンター新潟病院、帝京大学医学部講師などを経て、1999年、国内初の免疫細胞治療専門医療機関である瀬田クリニックへ。2001年、同クリニック院長(現任)、2017年、順天堂大学大学院医学研究科 次世代細胞・免疫治療学講座客員教授(現任)。著書に『免疫細胞治療』(共著・河出書房新社)、『自分の細胞で治す 女性が知っておきたい最先端がん治療』(共著・PHP研究所)など。(取材時現在)

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