がん免疫療法Q&A

Q.免疫療法の中でも、保険診療ではない免疫細胞治療は効果がない、という話を聞きました。 実際のところはどうなのでしょうか。

回答者:後藤重則(ごとう・しげのり)
医療法人社団 滉志会
瀬田クリニックグループ統括院長

2018年4月18日

A.「保険診療でないから治療効果がない」ということではありません。免疫療法も様々なものがあり、それぞれ作用や特徴は異なるため、患者さんに合った選択、組み合わせをしていくべきと考えます。

発症したがんを免疫で治せることが明らかになった

私たちの体の中には免疫というシステムが備わっており、この免疫が、がん細胞を攻撃・排除して体を守ってくれています。

以前は、1度発症してしまったがんは免疫の力で治すことは困難、という医師や研究者もいましたが、近年医薬品として承認された「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で、免疫でがんを治すことができるということが明確になりました。

なぜならこの薬は、薬自体にがん細胞を殺傷する力はなく、がん細胞を殺すのは、患者さん自身の免疫なのです。がん細胞が、免疫から自分の身を守るために出している障壁を取り払うことで、元々体がもつ免疫の攻撃を作動させることにより治療するのが、この薬の仕組みです。まさしく免疫の力だけでがんを治療します。

同じく免疫の仕組みを利用した「免疫細胞治療」は、患者さん自身の免疫細胞を体外で増強し、再び体内に戻す治療です。自らの細胞を治療に用いることで、重い副作用なくがんを攻撃します。このような治療は、1980年代に米国国立がん研究所のS.Rosenberg博士がメラノーマ(悪性黒色腫)に対する治療を開始して以来、各国の医師・研究者により様々な試みが続けられ、有効性を示す研究結果も多く公表されています。

[関連記事]免疫細胞療法の治療効果(科学的根拠)について

日本でも先進医療・研究医療として限定的に実施されていましたが、患者さんのニーズに応える形で、一般の医療施設でも幅広く受けられる治療になっています。
 

免疫の弱まっている部分に応じて、免疫療法の選択や組み合わせが必要

「同じ免疫療法でも、保険治療として認められた免疫チェックポイント阻害薬は有効だが、免疫細胞治療は作用の仕組みがまったく違う別物で、後者は効果がない」といった意見が一部の抗がん剤の専門医から出されています。しかし、免疫療法の研究論文を発表したり、日本再生医療学会の認定医であったりするがん免疫療法、細胞治療の専門家はそのように考えていません。

免疫というのは私たちの体の中の大きなシステムですが、がん患者さんの体内では、この免疫の働きのどこかの部分が弱まって、がんの発症、進行につながっているケースが多いことが分かっています。

弱まっている部分に応じて、ある患者さんでは、免疫チェックポイント阻害薬で攻撃に対する障壁を取り払うことが有効だったり、別の患者さんでは免疫細胞治療で攻撃する細胞そのものを増強することが有効だったり、あるいは両方を組み合わせることが必要だったりと、患者さんの状態に応じたアプローチが必要というのが正しい考え方です。

これまで、当院だけでも2万名を超す患者さんの治療経験があり、免疫細胞治療は、効果のある人には間違いなく、標準治療だけでは得難い治療効果が見られます。

もちろんどんな治療もそうであるように100%ということはなく、残念ながら効果が得られなかった患者さんもいます。治療効果をさらに高めていくことが必要です。免疫細胞治療の分野でも、近年の研究・技術的進歩によってこれまで難しかったことが可能になりつつあります。

・免疫の特性を考慮して、より早い段階で免疫療法を導入すること
・どのような免疫療法がその患者さんにより適しているかを、検査や診断で見極めること
・他の免疫治療と組み合わせて、免疫システムを効果的に作動させること

こうしたことで、さらに「効果の出る患者さん」を増やしていけると考えています。

免疫細胞治療を取り巻く環境は変わり、公的保険治療としての可能性も高まってきた

免疫細胞治療は、現状、国内で公的保険が適用されていません。
元々個体差が大きい患者さん自身の細胞を用いる治療なので、従来の均一な成分で作る医薬品の評価方法では治療効果を評価しにくく、保険適用されるための臨床試験(治験)がこれまで難しかったことが一因です。

細胞治療を安全に実施するために、2014年に施行された新しい法律「再生医療等安全性確保法」によって、免疫細胞治療を行う医療機関は、適切な審査・承認を受けた治療提供計画書を厚生労働省に提出することや、実施した治療について定期的な報告を行うよう義務付けられました。

さらに同じタイミングで従来の薬事法も改正され、日本で初めて、免疫細胞治療を含む再生医療を、医薬品として承認するために適した評価基準などが定められました。今後は免疫細胞治療の治験が行われ、公的保険のもとでの治療が実施されるという可能性も高まってきたと思います。

 

後藤重則
医療法人社団 滉志会
瀬田クリニックグループ統括院長
ごとう・しげのり●1981年、新潟大学医学部卒業。県立がんセンター新潟病院、帝京大学医学部講師などを経て、1999年、国内初の免疫細胞治療専門医療機関である瀬田クリニックへ。2001年、同クリニック院長(現任)、2017年、順天堂大学大学院医学研究科 次世代細胞・免疫治療学講座客員教授(現任)。著書に『免疫細胞治療』(共著・河出書房新社)、『自分の細胞で治す 女性が知っておきたい最先端がん治療』(共著・PHP研究所)など。(取材時現在)

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