がんと免疫

メリットもデメリットも。正しい情報を得て、正しい選択を。「免疫細胞療法説明会」参加レポート

※当記事の写真撮影・掲載は、参加者のご了承を得て行っています。

 

がんの治療において、主治医の治療方針はもちろん基本となるものですが、お任せや受け身の姿勢では、納得できる結果が得られないこともありえます。なぜなら、患者さんは年齢、健康状態、副作用の出方、生活面の様々な背景や考え方など人それぞれ、千差万別だからです。それぞれに合った治療を行うためには、患者さんや家族自身もできる限り多くの情報を得て、知識を持って治療選択を考えていくことが重要です。

近年話題の免疫療法のうち、がんによって弱められた免疫本来の働きを復活させる「免疫チェックポイント阻害剤」は、日本でも肺がん、胃がんなどいくつかのがんで認可され、その有用性が広く認知されています。また、体内の免疫力を強化する免疫細胞療法は、まだ保険治療として承認はされていないものの、手術や抗がん剤などほかの治療との併用で、上乗せ効果が期待できる研究結果が多くあり、広く実施されています。

ただし、こうした保険外診療での免疫細胞療法は、一部で過大な治療効果を謳(うた)って治療を薦めたり、技術的にも不確かな治療を行うなどの医療機関が問題になっており、インターネットなどでは情報の見極めが難しいのも実情です。そこで薦められるのが、医療機関が実施している「治療説明会」を利用することです。専門家から治療法について詳しく聞くことができますし、メリットやデメリット、各病院の治療方針など、幅広い情報を手に入れることができます。

しかしながら、「医療機関の説明会に参加すると治療を薦められて断れなくなるのでは…」といったことが心配で、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。そこで、実際に免疫細胞療法の治療説明会に参加し、どのようなことが行われているか、ありのままをレポートします。

今回参加するのは、医療法人社団滉志会 瀬田クリニック新横浜が開催する治療説明会。瀬田クリニックグループは、1999年に国内初のがん免疫細胞治療の専門医療機関として、故・江川滉二東大名誉教授が東京に開院し、現在は東京・横浜・大阪・福岡の全国4カ所にて展開。連携医療機関も全国にある、この分野では代表的な医療機関です。発展途上である免疫細胞療法に欠かせない治療効果の解析や、効果向上のための研究に取り組む、民間では数少ない施設で、大学病院等の多くのがん治療医からもその姿勢は評価されています。瀬田クリニック新横浜はグループの拠点のひとつで、毎月定期的に説明会を開催しているそうです。

 

免疫細胞療法の実際を包み隠さず、わかりやすく説明

説明会はクリニックのロビーで開催。この日は8組12名が参加していました。ご家族で参加している方もいらっしゃるようです。参加される方の平均的な割合は、患者さんご本人とご家族一緒が約半分、ご家族のみが3割、患者さんのみは2割ほどとのこと。

 

瀬田クリニック新横浜を訪れた参加者。受付をすませると会場となるロビーへ。

 

説明会で配られる資料一式。この他に、クリニックと治療の詳しい資料が事前に郵送される。

 

参加者全員がそろうと、院長の瀧本理修先生が挨拶を行うとともに、まずは、過去にテレビの取材を受けた際のVTRが流されます。映像でわかりやすくまとまっているので、理解の入り口として短時間で治療の概要をつかむことができます。

その後は、「瀬田クリニックグループにおける免疫細胞治療の方針~個別化医療の推進~」と題し、スライドを用いて瀧本院長が1時間程度お話を行いました。

冒頭では、がんと免疫の関係について説明。イラストを交えながら分かりやすく具体的に説明することで、参加者の皆さんも、がんになるプロセスと免疫が深く関係していることを徐々に理解しているようです。

 

イラストや図が中心のスライドは、一般の方にわかりやすい内容となっている。

 

トピックとして、最近注目を集めている「免疫チェックポイント阻害剤」の話題も上りました。「世界中で研究が進められており、日本でも多くのがんへの適用拡大が承認されています。こういったことからも、がんに対して免疫を活用した治療の有用性は、広く医師の間でも認識されるようになっています」と、免疫療法を取り巻く世界的な潮流を知ることができました。

続いて、瀬田クリニックで行っている免疫細胞治療の種類について解説。「樹状細胞ワクチン療法」「アルファ・ベータT細胞療法」「ガンマ・デルタT細胞療法」「ナチュラルキラー細胞療法」といった、複数の治療法があることを説明。それぞれの違いや特徴がわかりやすく解説されます。「樹状細胞ワクチン療法」の解説では、「患者さんご自身のがん細胞を使い、がんの目印を取り込ませることもできますが、その際は手術で摘出した、ホルマリン漬けされていないがん組織が必要。ご自身のがん組織がない場合は、ホルマリン固定されたがん組織を用いて免疫組織染色を行い、癌抗原を同定した上で合成ペプチドを代用します」といった、細かい違いを伝える場面もありました。

印象的だったのは、免疫細胞治療のメリットだけではなくデメリットも触れていたこと。「どの治療法を使うべきかは、患者さん一人ひとりのがん細胞の性質や免疫の状態によって異なりますから、治療前の検査でしっかりと調べたうえで最適な方法をご提案します。他方、免疫細胞治療とひと言に言っても、得意とするがんの種類は異なり、体の状況によって適さない治療法があることも事実。そういった点もしっかり伝えたうえで治療を進めていくのが、我々の方針です」と、包み隠さず情報を伝えることで、免疫細胞治療に対する理解や納得を深めようとする姿勢がうかがえました。

最後は「個別化医療」のトピックへ。「他の医療機関も含め、さまざまな種類の免疫細胞治療がありますが、人によって最適な治療が違うことをきちんと伝えているところは多くありません。患者さんの免疫状態やがん細胞の目印の発見など、しっかりと免疫学的検査をして、適した治療法を選択する必要があります。」と説明。「三大治療や免疫チェックポイント阻害剤などとも併用するなど、土台として活用していただきたいと考えています」と締めくくりました。

 

専門家がその場で質問に回答することで参加者の疑問や不安の解消に努める

その後は、参加者による質疑応答が行われました。この日は「主治医が免疫細胞治療に反対しています。紹介状の持参がなくても治療は受けられますか?」、「化学療法や放射線治療は行わず、免疫細胞治療単独で行うことはどう思いますか?」といった質問が。瀧本院長は、「可能な限り、主治医が行う標準治療と組み合わせて免疫細胞治療を行うことを推奨します。組み合わせることで上乗せ効果が期待できるからです」と、専門家の立場から丁寧に回答。「胃がんでステージⅣ、転移もありますが、免疫細胞治療の対象になりますか?」といった問いには、「がんの種類やステージに関わらず、通院可能であれば治療の対象になります。ただし、自己免疫疾患などがあればできないケースも」と回答していました。

ここで瀧本先生は退場し、参加者はクリニック内の見学へ。患者さんの細胞を培養するクリーンルームがクリニックに隣接しており、これは、安全管理が徹底された国内でも最大級の細胞培養施設とのこと。免疫細胞治療のプロセスの一端を実際に見ることは、参加者の安心感につながったようです。

 

クリニックに隣接する細胞培養施設へ。衛生上、室内の見学はできないため、ドアの外からどういったプロセスで培養されるのか、管理状態などについて実際の培養技師が解説。

 

クリーンルーム内の様子。機材や空調の設備は、コンピューターでの一元管理システムで24時間リアルタイムに稼動状態を監視している。

 

院内見学から戻ると、最後は、参加者1組に対して看護師などスタッフが1名ついて、個別の質問に対する対応が始まりました。

実は、以前は医師による質疑応答のみだったそうですが、参加者のニーズを満たした形でお帰りいただくには、個別での対応も必要だと考え、いまのようなスタイルになったとのこと。看護師長の伊藤一美さんは、次のように話します。

「参加者の皆さんは聞きたいことがあり説明会に足を運びますが、他の方もいらっしゃる質疑応答の時間では、自身の病状や個々の事情を話しにくいのが心情だと思います。個別対応なら話しやすく、プライバシーも守られます」

よく受ける質問としては「治療の流れ」「治療の期間や費用」「先進医療の民間保険は使えるのか」など。「ほかの持病もあるが、治療は可能か」といった、個々の事情に関係する質問も多いそうです。

「相手の立場に立ち、免疫細胞治療に精通している私たちが真摯に向き合い、正確な情報を通じてサポートできるよう努めています」(伊藤さん)

 

参加者1組に対してスタッフ1人がつき、丁寧にサポート。質疑応答で聞けなかった疑問などに答えてくれる。

 

説明会は“営業の場”ではない。正確な情報をお伝えして、正しい判断に役立ててほしい

説明会の終了後、瀧本院長にお話を伺いました。

 

瀬田クリニック新横浜の瀧本理修(たきもと りしゅう)院長。札幌医科大学附属病院腫瘍診療センター化学療法管理室室長、腫瘍・血液内科学講座准教授を経て、2015年から瀬田クリニックグループに勤務。翌年から新横浜院長に。免疫細胞療法だけでなく、化学療法など標準治療にも精通しており、治療全体を踏まえた助言をしてくれる。
瀬田クリニック http://www.j-immunother.com/

 

「嘘はもちろん言えませんし、過度な期待を煽(あお)ってもいけません。説明会で患者さんを増やそうという気もありません。心がけているのは、正しい情報を伝えることです。患者さんのほうが仮に治療に前向きでも、状況によっては、すぐに免疫細胞治療は行わず、標準治療を優先するようにアドバイスすることもあります」

ちなみに、瀬田クリニックには、「医療連携スタッフ」と呼ばれる、患者さんの主治医との間をつなぐ専門職もいて、標準治療と免疫細胞療法をスムーズに併用できるよう、サポートしているとか。

「患者さんの主治医は、皆さん責任を持って自分の患者さんの治療にあたっていますので、きちんと免疫細胞療法の状況を報告・共有することを大切にしています」

なお、この日の参加者から「免疫細胞治療といっても、ネットなどで多くのクリニック、治療法が出てきます。結局のところ、どこが一番良いのでしょうか?」という質問がありました。これに対して瀧本院長は「標準治療も含めた、がん治療の経験が豊富な医師(団)がいる医療機関を選ぶこと、豊富な症例と経験を基に適切な免疫細胞治療を提供できるかが大事。治療を検討している方へ最も伝えたいのは、この点です」と強調しました。

免疫細胞療法 治療説明会情報
http://www.j-immunother.com/seminar