よくわかる最新医療研究

体内の免疫細胞の動きと働きを可視化して医療の可能性を広げる蛍光イメージングの世界

「人間の体は免疫によって守られている」と言われるが、生体内での免疫細胞の活動については、実はまだよく分かってはいない。科学誌や医学誌などには、T細胞やマクロファージなど、免疫系細胞の働きがきれいに図式化されて掲載されている。それらは、体から取り出した細胞を刺激して反応を調べたり、組織標本を顕微鏡で観察した結果に基づいて描かれてきた。10年ほど前から、生きた体の中での免疫細胞の動きと働いている現場を実際に目に見えるように(可視化)して、免疫細胞の機能を解明する取り組みが進められている。京都大学の戸村道夫特定准教授(当時)が進めている「細胞機能と分子活性の多次元蛍光生体イメージング」の研究は、その一つである。

 
生体内で実際に動く免疫細胞を見ることの重要性
「どういう種類の免疫細胞が体の中のどこからどこへ、どれくらいの数、どのような速度で移動しているのかを解明できれば、免疫系の病気の治療に役立つと思います」と戸村氏は言う。生体イメージングの研究は、可視化用に改良された特殊なマウスで行われ、細胞に光を当てると、赤、緑、青といった様々な色の蛍光を発するタンパク質を発現している。これらを観察すると、一つの細胞が臓器内や臓器間をどう移動したかを追うことができる。また、例えば細胞の色が、細胞が生きているときは緑、死ぬと茶色になる蛍光タンパク質を使うと、細胞の状況によって色が変化するので、そこから生きているのか、死滅したのかという細胞の状態が読み取れる。

CD8+T細胞(細胞傷害性T 細胞)は、キラーT 細胞とも呼ばれる。リンパ球系のT 細胞の一種で、異物である細胞(ウイルス感染細胞、がん細胞、移植細胞など)を認識して攻撃、殺傷する。戸村氏は、上図のように、樹状細胞がアポトーシスした腫瘍細胞を食べてから、キラーT 細胞が活性化するまでの流れを可視化する研究を続けている。
CD8+T細胞(細胞傷害性T 細胞)は、キラーT 細胞とも呼ばれる。リンパ球系のT 細胞の一種で、異物である細胞(ウイルス感染細胞、がん細胞、移植細胞など)を認識して攻撃、殺傷する。戸村氏は、上図のように、樹状細胞がアポトーシスした腫瘍細胞を食べてから、キラーT 細胞が活性化するまでの流れを可視化する研究を続けている。
キラーT 細胞は、がん組織に浸潤後、がん細胞とコンタクトしてがん細胞が死滅すると、次のがん細胞に向かう。がん細胞の死滅を緑色から茶色への色の変化で観察。
キラーT 細胞は、がん組織に浸潤後、がん細胞とコンタクトしてがん細胞が死滅すると、次のがん細胞に向かう。がん細胞の死滅を緑色から茶色への色の変化で観察。
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