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難治性の白血病や悪性リンパ腫に有望な新型T細胞

遺伝子工学技術が可能にした新しい治療法。
慢性リンパ性白血病治療やB細胞性腫瘍に光明

キメラ抗原受容体を導入した新型T細胞

免疫学の権威で米国・ペンシルバニア大学の病理学教授カール・H・ジューン博士は、2011年、「CAR導入T細胞」が「血液のがん」白血病の治療に非常に有効であることを発表した。

CARとは、「がんの目印(抗原)」を見つけて結合する免疫物質(抗体)の一部と、T細胞が外からの情報を伝達する部分を、遺伝子工学の技術によってつなぎ合わせたもので、キメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる。これを、がんの攻撃部隊であるT細胞に導入したものがCAR導入T細胞だ。

この新型のT細胞は体内に投与されると、CARが「がんの目印」を見付けてがんと結合し、結びついたがんの情報と、導入したT細胞を活性化・増殖させる信号を瞬時に発信する。これを受けたT細胞がサイトカイン(P14)を産生・放出し、がん細胞を攻撃し、死滅させるのである。

CAR導入T細胞を作るには、ウイルスの感染作用を利用してCARを導入する方法(ウイルスベクター)と、細胞に電気的に穴をあけて導入する方法(エレクトロポレーション)があり、前者はゲノム(染色体)にCARを組み込めるので、細胞が分裂しても持続した効果が得られる。ただし安全性の確保が難しく、副作用の可能性もある。一方、後者はゲノムには取り込めないため、効果は一過性で、一長一短と言われる。

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