AGA

5αリダクターゼとは?役割・発生原因・減らす方法について

薄毛や抜け毛に悩む方なら、一度は「5αリダクターゼ」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この酵素は、男性型脱毛症(AGA)の発症に深く関わっている重要な物質です。しかし、実は私たちの体にとって必要な働きも持っているため、正しく理解することが大切です。

本記事では、5αリダクターゼの基本的な知識から、薄毛との関係、そして効果的な対策方法まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

5αリダクターゼとは?メカニズムと種類を解説

5αリダクターゼとは…
前頭部や後頭部、側頭部、前立腺などに存在する酵素です。

男女問わず人間の体内に存在する酵素の一種で、男性ホルモンである「テストステロン」を「ジヒドロテストステロン(以下、DHT)」に変換させる働きを持ちます。

そもそも酵素とは、私たちの体内で起こる様々な化学反応を促進する物質のことです。人間の体には約5,000種類もの酵素が存在し、消化・吸収・代謝・排泄など、生命活動に欠かせない役割を担っています。5αリダクターゼは、その中でも「還元酵素」と呼ばれる種類に分類される特別な酵素なのです。

5αリダクターゼの種類:Ⅰ型・Ⅱ型の違いを比較

5αリダクターゼには、Ⅰ型とⅡ型の2種類が存在し、それぞれ体内での分布場所や特徴が異なります。

種類主な分布場所特徴関連する症状
Ⅰ型皮脂腺・皮膚・肝臓
側頭部・後頭部
皮脂分泌に関与
思春期に活発
脂性肌・ニキビ
Ⅱ型前立腺・毛乳頭
前頭部・頭頂部
毛髪の成長に影響
AGAに深く関与
男性型脱毛症
前立腺肥大

5αリダクターゼⅠ型は、皮脂の分泌を促進する作用があります。

5αリダクターゼⅡ型は頭部に存在する場合は脱毛を促し、頭部以外の部位では発毛を促すという作用があります。

特にⅡ型の方がAGAと深い関係があると考えられています。

5αリダクターゼの役割とは?知っておきたい基本知識

5αリダクターゼの最も重要な役割は、男性ホルモンであるテストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換することです。

変換の流れ
テストステロンとの結合
血液中を流れるテストステロンが、頭皮や前立腺などに存在する5αリダクターゼと出会います
化学反応の促進
5αリダクターゼが触媒となり、テストステロンの構造を変化させます
DHTの生成
より強力な男性ホルモンであるDHTが作り出されます

ジヒドロテストステロンは、髪の成長に必要な毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体に取り込まれ、脱毛を促す信号を発信するようになります。

毛髪や皮脂分泌に及ぼす影響

5αリダクターゼが生成するDHTは、頭皮と体毛で正反対の作用を示すという興味深い特徴があります。

頭皮への影響

  • ヘアサイクルの成長期を短縮(通常2~6年→数ヶ月に短縮)
  • 毛母細胞の活動を抑制
  • 髪の毛が十分に成長する前に抜け落ちる

皮脂分泌への影響

  • 皮脂腺を活性化させ、皮脂の分泌量を増加
  • 過剰な皮脂により毛穴の詰まりやニキビの原因に
  • 頭皮環境の悪化を招く可能性

男性の生殖機能に関わる役割

DHTは男性らしい体づくりにおいて不可欠な存在です。DHTには、胎児の男性外性器をつくる働きなどがあり、男性の体にとって重要な働きをしています。

具体的な役割
☑男性生殖器の形成と発達
☑前立腺の正常な機能維持
☑筋肉量の増加
☑骨密度の維持
☑声変わりや体毛の増加に関わる作用

思春期における第二次性徴の発現にも、5αリダクターゼは重要な役割を果たしています。

  • 声変わり:喉頭の発達を促進
  • 体毛の増加:ひげ、脇毛、陰毛などの成長を促進
  • 体格の変化:筋肉や骨格の発達をサポート

これらの変化は、男性として成長する過程で必要不可欠なものです。そのため、5αリダクターゼを完全に抑制することは望ましくありません。

生活習慣や遺伝が影響?5αリダクターゼが増える仕組み

5αリダクターゼの活性度は、遺伝による影響が大きいと考えられており、活性を持つ遺伝子は優性遺伝です。

両親のどちらか一方が、5αリダクターゼの活性度が高ければ、子供にもその情報が引き継がれやすいとされています。

特に注目すべきポイント
☑母方の祖父が薄毛の場合、遺伝リスクが高い
☑男性ホルモン受容体の感受性も遺伝する
☑家族に薄毛の人が多い場合は早めの対策が重要

男性ホルモンの分泌量との関係

男性ホルモンの分泌量が多いと、5αリダクターゼと結合する機会が増え、結果的にDHTの生成量も増加します。

男性ホルモンの分泌に影響する要因

  • 年齢:20代~30代がピーク
  • 筋トレ:激しい運動で一時的に増加
  • 競争心:ストレスや興奮で分泌促進
  • 食事:肉類中心の食生活で増加傾向

生活習慣や食事によるホルモンバランスの乱れ

食生活が乱れると栄養が不足したり、皮脂の分泌が過剰になったりして頭皮環境が悪くなります。睡眠不足やストレスも血行不良の原因となり、頭皮に栄養が届きにくくなる原因になります。

ホルモンバランスを乱す生活習慣

  • 睡眠不足:成長ホルモンの分泌低下
  • 偏った食事:ビタミン・ミネラル不足
  • 過度な飲酒:肝機能低下によるホルモン代謝異常
  • 喫煙:血行不良と栄養供給の阻害
  • 運動不足:代謝の低下

5αリダクターゼが増えると起こる症状とは?AGAとの関係も解説

AGAは、男性ホルモンのテストステロンが頭皮の5αリダクターゼと結びつき、ジヒドロテストステロンに変化することが発端となり発症します。

AGAの進行メカニズム
☑テストステロンと5αリダクターゼが結合
☑DHTが生成される
☑DHTが毛乳頭細胞の受容体と結合
☑脱毛因子(TGF-β)が産生される
☑ヘアサイクルが乱れ、成長期が短縮
☑髪が細く短くなり、最終的に脱毛

AGAの特徴的な脱毛パターン
M字型:額の生え際から後退
>>M字はげの治し方について
O字型:頭頂部から円形に薄くなる
>>頭頂部はげ(つむじはげ)の治し方について
U字型:前頭部全体が後退

皮脂分泌の過剰によるニキビや脂性肌

5αリダクターゼⅠ型の活性が高い人は、皮脂の過剰分泌により以下のような症状が現れやすくなります。

  • 脂性肌:顔や頭皮のベタつき
  • ニキビ:毛穴の詰まりによる炎症
  • 脂漏性皮膚炎:頭皮の赤みやフケ
  • 毛穴の開き:皮脂による毛穴の拡張

これらの症状は、5αリダクターゼの活性度が高いサインかもしれません。

前立腺肥大など健康リスクへの影響

DHTは、前立腺の細胞を増殖させることで、前立腺肥大症につながります。前立腺肥大症は男性特有の病気で、尿道の周りにある前立腺が肥大し、尿道が圧迫されることで、排尿に関するさまざまな症状が出る病気です。

前立腺肥大症の症状

  • 頻尿(特に夜間)
  • 排尿困難
  • 残尿感
  • 尿の勢いの低下

50代以降の男性に多く見られ、70代以降では7~8割が発症するとされています。

5αリダクターゼを減らす方法は生活習慣で抑制可能

・抑制が期待できる栄養素を取り入れる
・睡眠や運動でホルモンバランスを整える
・ストレスケアとリラックス法を試す
・禁煙・節酒を心掛ける

抑制が期待できる栄養素を取り入れる

5αリダクターゼの活性を抑制する効果が期待できる栄養素と食品を積極的に摂取しましょう。

亜鉛を含む食品 亜鉛には髪の毛の主成分であるケラチンの生成をサポートする働きがあります。

  • 生牡蠣(特に豊富)
  • 豚レバー
  • 牛肉
  • チーズ

イソフラボンを含む食品 イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用を持つことから、AGAの原因となる男性ホルモン(テストステロン)との調和が取れ、ホルモンバランスが整う効果も期待できます。

  • 大豆製品(豆腐、納豆、豆乳)
  • きな粉
  • 味噌

その他の有効な栄養素

  • ビタミンB群:エネルギー代謝を促進
  • ビタミンE:血行促進効果
  • オメガ3脂肪酸:炎症を抑制

睡眠や運動でホルモンバランスを整える

質の良い睡眠の確保

  • 1日7~8時間の睡眠を心がける
  • 22時~2時のゴールデンタイムに就寝
  • 寝る前のスマホやPCを控える
  • 室温や湿度を快適に保つ

適度な運動の実施

  • 週3回、30分程度の有酸素運動
  • ウォーキングやジョギングなど無理のない運動
  • 筋トレは適度に(過度な筋トレは逆効果)
  • ヨガやストレッチで血行促進

ストレスケアとリラックス法を試す

ストレスは自律神経を乱し、ホルモンバランスに悪影響を与えます。

効果的なストレス解消法

  • 深呼吸法:1日数回、腹式呼吸を実践
  • 瞑想:5~10分の短時間でも効果的
  • 趣味の時間:好きなことに没頭する
  • 入浴:38~40度のぬるめのお湯でリラックス
  • マッサージ:頭皮マッサージで血行促進

禁煙・節酒を心掛ける

喫煙の悪影響

  • 血管を収縮させ、頭皮への栄養供給を阻害
  • 活性酸素を増やし、細胞にダメージ
  • ビタミンCを大量消費し、コラーゲン生成を妨げる

過度な飲酒の影響

  • 肝臓に負担をかけ、ホルモン代謝が低下
  • 亜鉛の吸収を阻害
  • 睡眠の質を低下させる

禁煙・節酒を心がけることで、5αリダクターゼの活性を抑制し、健康的な頭皮環境を維持できます。

医療に頼ることでより5αリダクターゼを減らせる

・医薬品での対策
・サプリメントによるサポート

医薬品での対策

5αリダクターゼを抑制する代表的な治療薬には以下があります。

フィナステリド(プロペシア)

  • Ⅱ型5αリダクターゼを選択的に阻害
  • AGAの進行を抑制
  • 1日1回の内服薬
  • 効果実感まで3~6ヶ月必要

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デュタステリド(ザガーロ)

  • Ⅰ型とⅡ型の両方に作用する薬です
  • フィナステリドより強力な効果
  • 前立腺肥大症の治療にも使用
  • 副作用に注意が必要

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これらの医薬品は医師の処方が必要です。必ず専門医の診察を受けてから使用しましょう。通院が難しい場合はオンライン診療クリニックがおすすめです。

サプリメントによるサポート

医薬品ほどの効果は期待できませんが、補助的な役割として以下のサプリメントが注目されています。

ノコギリヤシ

  • 5αリダクターゼの抑制効果が期待される
  • 前立腺肥大症の改善にも使用
  • 天然成分で副作用が少ない

亜鉛サプリメント

  • 髪の主成分ケラチンの生成をサポート
  • 1日の推奨摂取量:成人男性12mg、成人女性9mg
  • 過剰摂取に注意

イソフラボンサプリメント

  • ホルモンバランスを整える
  • 大豆由来の天然成分

ただし、サプリメントの効果には個人差があり、医薬品のような確実な効果は期待できないことを理解しておきましょう。

過度な自己判断は避け専門医への相談を

薄毛の原因は5αリダクターゼだけでなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。

専門医への相談が重要な理由

  • 正確な診断が可能
  • 個人に合った治療法の提案
  • 副作用のモニタリング
  • 効果の経過観察

早期治療で進行を抑えることができるため、薄毛が気になり始めたら早めにAGA治療クリニックや皮膚科を受診することをおすすめします。

5αリダクターゼに関するよくあるお悩みQ&A

5αリダクターゼが多いと必ず薄毛になるの?

必ずしも薄毛になるわけではありません。

5αリダクターゼの活性度が高くても、以下の要因により薄毛にならない人もいます

  • 男性ホルモン受容体の感受性が低い
  • 頭皮環境が良好に保たれている
  • 生活習慣が整っている
  • その他の遺伝的要因

薄毛は複数の要因が重なって起こるため、5αリダクターゼだけで決まるものではありません。

女性にも5αリダクターゼはあるの?

女性の体内にも存在します。

5αリダクターゼは女性の体内にも存在し、頭皮全体に分布していますが、それが必ずしも薄毛の原因になるわけではありません。

女性の場合

  • 女性ホルモンが男性ホルモンの作用を抑制
  • FAGA(女性男性型脱毛症)の原因の一つ
  • 更年期以降にホルモンバランスが変化すると影響が出やすい
  • FAGAの主な原因としては、遺伝的要因、加齢によるエストロゲンの減少、自律神経の不調などが挙げられます

減らしすぎると体に悪影響はない?

過度な抑制は避けるべきです。

5αリダクターゼには以下のような重要な役割があるため、完全に抑制することは望ましくありません:

  • 男性生殖器の正常な機能維持
  • 第二次性徴の発現
  • 筋肉や骨格の発達
  • 前立腺の正常な機能

医薬品を使用する場合は、必ず医師の指導のもとで適切な用量を守ることが大切です。

抑制はいつから始めるべき?

薄毛や皮脂の変化が気になり始めた時が目安です。

以下のサインが現れたら対策を検討しましょう

  • 抜け毛が増えた
  • 髪のボリュームが減った
  • 頭皮のベタつきが気になる
  • 家族に薄毛の人がいる(予防的対策)

早めの対応が有効なため、気になり始めたらすぐに生活習慣の改善から始め、必要に応じて専門医に相談することをおすすめします。

5αリダクターゼは体に必要な酵素!働きを理解して対策を始めよう

5αリダクターゼは、薄毛の原因となる一方で、私たちの体にとって必要不可欠な酵素でもあります。男性らしい体をつくり、第二次性徴を促進するなど、重要な役割を担っているのです。

大切なのは、5αリダクターゼを「悪者」として完全に排除しようとするのではなく、適切にコントロールすることです。生活習慣の改善から始め、必要に応じて医療の力を借りながら、バランスの取れた対策を行うことが重要です。

薄毛が気になる方は、早めに専門医に相談することをおすすめします。正しい知識を持って適切な対策を行えば、健康的な髪を維持することができるでしょう。

5αリダクターゼとうまく付き合いながら、自信を持てる髪を目指していきましょう。

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