亜鉛は髪の主成分であるケラチンの合成に欠かせない栄養素で、不足すると抜け毛や薄毛につながることもあります。
この記事では、亜鉛と髪の関係から適切な摂取方法、注意点まで詳しく解説します。

亜鉛ってどんな栄養素?体に欠かせない栄養素の基本をチェック
亜鉛は、私たちの体にとって必要不可欠なミネラルの一つです。体内では作ることができない「必須微量元素」として、食事から摂取する必要があります。
成人の体内には約2〜3gの亜鉛が存在し、その多くは筋肉や骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに分布しています。「微量」という名前がついていますが、その働きは決して小さくありません。
300種類以上の酵素の構成成分として、私たちの生命活動を支えている重要な栄養素です。
体の中で亜鉛が果たす主な役割
亜鉛は体内で様々な働きをしていますが、特に重要なのが細胞分裂や新陳代謝のサポートです。
DNAやRNAの合成に関わる酵素の構成要素として、細胞分裂を正常に行うために欠かせません。特に成長期の子どもや、妊娠中の女性にとって重要な栄養素です。
免疫細胞の働きを活性化し、風邪やインフルエンザなどの感染症から体を守る役割を果たします。亜鉛が不足すると、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなることが知られています。
舌の味蕾(みらい)という味を感じる細胞の新陳代謝に亜鉛が必要です。亜鉛不足になると、味覚障害を引き起こすことがあります。
皮膚や髪の毛の細胞は、常に新しく生まれ変わっています。この新陳代謝のプロセスに亜鉛が深く関わっており、健康な肌や髪を維持するために重要な役割を果たしています。
不足すると起こる不調やトラブル
亜鉛が不足すると、体のあらゆる部分に影響が現れます。
最も分かりやすい症状が味覚障害です。「何を食べても味がしない」「いつもと味が違う」といった症状が現れたら、亜鉛不足を疑ってみましょう。
また、肌荒れやニキビ、傷の治りが遅いといった皮膚トラブルも亜鉛不足のサインです。
髪に関しては、抜け毛の増加、髪が細くなる、白髪が増えるなどの症状が現れることがあります。爪がもろくなったり、白い斑点ができたりするのも亜鉛不足の特徴的な症状です。
さらに、集中力の低下、疲れやすさ、イライラしやすいといった精神的な症状も現れることがあります。男性の場合は、精子の数が減少したり、性機能が低下したりすることもあります。
髪や肌の健康との関わり
髪の毛の主成分は「ケラチン」というタンパク質ですが、このケラチンを作る過程で亜鉛が必要不可欠です。亜鉛は、食事から摂取したタンパク質を髪の毛の材料となるケラチンに変換する際に、重要な役割を果たしています。
具体的には、亜鉛は「ケラチン合成酵素」の活性化に必要で、この酵素が働かないとタンパク質からケラチンを作ることができません。つまり、いくらタンパク質を摂取しても、亜鉛が不足していれば健康な髪は作られないのです。
皮膚においても、亜鉛は表皮細胞の分裂と分化を促進し、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)を正常に保つ働きがあります。正常なターンオーバーは約28日周期ですが、亜鉛が不足するとこの周期が乱れ、肌荒れやくすみの原因となります。
現代人は亜鉛不足になりやすい理由
現代の日本人の多くが、知らず知らずのうちに亜鉛不足に陥っています。
最大の理由は、食生活の変化です。加工食品やインスタント食品、ファストフードの利用が増え、新鮮な食材を使った手作りの食事が減っています。
加工食品には、亜鉛の吸収を妨げる「フィチン酸」や「ポリリン酸」などの食品添加物が含まれていることが多く、亜鉛の吸収率を下げてしまいます。
また、外食やコンビニ弁当中心の食生活では、亜鉛を多く含む牡蠣、レバー、赤身肉などを摂取する機会が少なくなります。さらに、ダイエットのために極端な食事制限をしたり、ベジタリアン・ビーガン食を実践したりする人も増えており、動物性食品から摂取できる亜鉛が不足しがちです。
ストレス社会も亜鉛不足を加速させています。ストレスがかかると体内で活性酸素が増え、除去するために亜鉛が大量に消費されます。また、アルコールの摂取も亜鉛の消費を増やし、尿への排出も促進するため、お酒を飲む習慣がある人は特に注意が必要です。
髪の毛が増える?亜鉛と薄毛の関係を分かりやすく解説
「亜鉛を摂れば髪が生える」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。ここでは、亜鉛と薄毛の関係について、科学的な観点から詳しく解説していきます。
抜け毛や薄毛に亜鉛が関係している理由
亜鉛不足が抜け毛や薄毛につながるメカニズムは、実は明確に解明されています。
前述の通り、亜鉛は髪の主成分であるケラチンの合成に不可欠です。亜鉛が不足すると、タンパク質からケラチンへの変換がスムーズに行われなくなり、髪の毛の生成自体が滞ってしまいます。
さらに、亜鉛は毛母細胞の分裂にも関わっています。毛母細胞は髪の毛を作り出す工場のような存在で、この細胞が活発に分裂することで髪が成長します。亜鉛不足により毛母細胞の分裂が鈍化すると、髪の成長速度が遅くなり、細く弱い髪しか生えてこなくなります。
また、亜鉛には抗酸化作用もあり、頭皮の酸化ストレスから毛包を守る役割も果たしています。酸化ストレスは毛包の老化を促進し、髪の成長サイクルを乱す原因となるため、亜鉛不足は間接的にも薄毛のリスクを高めることになります。
実際に「亜鉛で髪が増える」って本当?
「亜鉛を摂れば髪が増える」というのは、正確な表現ではないです。
亜鉛は、髪の成長に必要な「土台」を整える栄養素です。亜鉛不足が原因で薄毛になっている場合は、適切な量の亜鉛を摂取することで改善が期待できます。しかし、亜鉛が十分に足りている人が、さらに大量に摂取しても髪が劇的に増えるわけではありません。
つまり、亜鉛は「髪を生やす薬」ではなく、「髪が正常に育つために必要な栄養素」と理解することが大切です。家を建てるときの基礎工事のようなもので、基礎がしっかりしていなければ立派な家は建ちませんが、基礎だけあっても家は完成しません。
実際の研究でも、亜鉛欠乏症の患者に亜鉛を補給したところ、脱毛症状が改善したという報告がある一方で、亜鉛レベルが正常な人への補給では、髪への明確な効果は認められていません。
男性型脱毛症(AGA)と亜鉛の関係は
AGAの主な原因は、DHT(ジヒドロテストステロン)という男性ホルモンです。このDHTは、テストステロンが5αリダクターゼという酵素によって変換されて生成されます。
亜鉛にはこの5αリダクターゼの活性を抑制する可能性があることが、いくつかの研究で示唆されています。理論上は、亜鉛の摂取によってDHTの生成が抑えられ、AGAの進行を遅らせる効果が期待できます。
ただし、この効果は医薬品のフィナステリドやデュタステリドと比較すると非常に弱く、亜鉛だけでAGAを治療することは現実的ではありません。AGAの治療においては、亜鉛はあくまでも補助的な役割として、医薬品治療と併用することで相乗効果が期待できる程度と考えるのが妥当です。
また、AGA患者の血中亜鉛濃度を調べた研究では、健常者と比較して有意に低いという報告もあります。
女性の薄毛や産後の抜け毛にも効果はある?
女性の薄毛や産後の抜け毛に対しても、亜鉛は一定の効果が期待できます。
女性の薄毛の原因は男性とは異なり、ホルモンバランスの変化、鉄分不足、ストレス、過度なダイエットなど多岐にわたります。栄養不足が原因の場合は、亜鉛を含むバランスの良い栄養摂取が改善につながることがあります。
特に産後の抜け毛は、妊娠中に胎児に栄養を優先的に送っていたことや、授乳による栄養消費、ホルモンバランスの急激な変化などが原因で起こります。この時期は亜鉛を含む各種ミネラルが不足しやすく、適切な補給が回復を早める可能性があります。
ただし、効果には個人差があり、亜鉛だけで劇的な改善を期待するのは難しいでしょう。鉄分、ビタミンB群、タンパク質など、他の栄養素もバランスよく摂取することが重要です。
髪への効果も期待!亜鉛摂取で期待できるメリット
亜鉛を適切に摂取することで、髪だけでなく全身の健康にも様々なメリットが期待できます。ここでは、亜鉛がもたらす具体的な効果について詳しく見ていきましょう。
髪の成長をサポートする働き
亜鉛の最も重要な役割は、髪の成長を内側からサポートすることです。
髪の毛は、毛根にある毛母細胞が分裂を繰り返すことで成長します。亜鉛は、この細胞分裂に必要なDNA複製やタンパク質合成に関わる酵素の構成成分として働きます。十分な亜鉛があることで、毛母細胞は活発に分裂し、太く健康な髪を生み出すことができるのです。
また、亜鉛はケラチン合成にも不可欠です。髪の約90%を占めるケラチンは、18種類のアミノ酸から構成される複雑なタンパク質です。食事から摂取したタンパク質を分解してアミノ酸にし、それを再びケラチンとして組み立てる過程で、亜鉛が触媒として重要な役割を果たします。
さらに、亜鉛は髪のハリやコシを維持する働きもあります。髪の内部構造を支えるジスルフィド結合(S-S結合)の形成にも亜鉛が関与しており、この結合が髪の弾力性や強度を決定します。亜鉛が十分にあれば、髪は外部からのダメージに強く、しなやかな状態を保つことができます。
頭皮環境の改善が期待できる
健康な髪は健康な頭皮から生まれます。亜鉛は頭皮環境を整える上でも重要な役割を果たしています。
亜鉛には皮脂分泌を調整する作用があります。皮脂は頭皮を乾燥から守る重要な役割がありますが、過剰になると毛穴を詰まらせ、炎症やフケの原因となります。亜鉛は皮脂腺の働きを正常化し、適度な皮脂分泌を維持することで、頭皮の健康を保ちます。
また、亜鉛の抗炎症作用も見逃せません。頭皮の炎症は、脂漏性皮膚炎や毛包炎などの原因となり、抜け毛を誘発することがあります。亜鉛は炎症を引き起こすサイトカインの産生を抑制し、頭皮の炎症を鎮める効果があります。
さらに、亜鉛には抗菌作用もあり、頭皮の常在菌のバランスを整える働きがあります。マラセチア菌などの過剰増殖を抑えることで、フケやかゆみの予防にもつながります。
ホルモンバランスを整えるサポート
亜鉛は、男性ホルモン・女性ホルモンの両方の代謝に関わっています。
男性の場合、亜鉛はテストステロンの合成に必要です。適切なテストステロンレベルは、髪の成長だけでなく、筋肉量の維持、性機能、精神的な活力にも重要です。一方で、前述の通り5αリダクターゼの活性を抑制する可能性もあり、テストステロンからDHTへの過剰な変換を防ぐ効果も期待できます。
女性においては、亜鉛は卵巣機能をサポートし、エストロゲンとプロゲステロンのバランスを整える働きがあります。月経周期の正常化や、更年期症状の緩和にも役立つ可能性があります。
また、亜鉛はインスリンの合成と分泌にも関わっており、血糖値の安定化にも貢献します。血糖値の乱れはホルモンバランスに影響を与えるため、間接的に髪の健康にも関わってきます。
免疫力アップや美肌にもつながる
亜鉛の効果は髪だけにとどまりません。全身の健康維持に欠かせない栄養素です。
T細胞やB細胞といった免疫細胞の発達と機能維持に不可欠です。また、抗体の産生にも関わっており、ウイルスや細菌から体を守る免疫システムの要となっています。風邪をひきにくくなる、傷の治りが早くなるなどの効果が期待できます。
コラーゲンの合成にも亜鉛が必要です。コラーゲンは肌の弾力性を保つ重要なタンパク質で、亜鉛不足はシワやたるみの原因となります。また、亜鉛の抗酸化作用により、紫外線によるダメージから肌を守る効果も期待できます。
摂りすぎには注意!亜鉛のデメリットや副作用
亜鉛は体に必要な栄養素ですが、摂りすぎは逆に健康を害する可能性があります。
過剰摂取で起こる体調不良
亜鉛の過剰摂取による急性中毒症状として、最も多いのが、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状です。
特に空腹時に高用量の亜鉛サプリメントを摂取すると、胃粘膜を刺激して強い吐き気を引き起こすことがあります。症状は、1日に100mg以上の亜鉛を摂取した場合に起こりやすくなります。
その他の急性症状
- めまい、頭痛
- 発熱、悪寒
- 倦怠感
- 金属味(口の中が金属っぽい味がする)
日本人の食事摂取基準では、成人男性の亜鉛の耐容上限量は40〜45mg/日、成人女性は35mg/日とされています。この量を超えて長期間摂取を続けると、慢性的な健康被害のリスクが高まります。
銅不足や鉄の吸収への悪影響
亜鉛の過剰摂取で最も問題となるのが、他のミネラルとの相互作用です。
亜鉛と銅は、小腸での吸収において競合関係にあります。亜鉛を過剰に摂取すると、銅の吸収が阻害され、銅欠乏症を引き起こす可能性があります。
銅欠乏症の症状
- 貧血(銅は赤血球の生成に必要)
- 白血球減少(免疫力低下)
- 骨粗しょう症
- 神経障害
- 心血管系の異常
特に、亜鉛と鉄を同時に摂取すると、お互いの吸収を阻害し合います。これにより、鉄欠乏性貧血のリスクが高まる可能性があります。
マグネシウムやカルシウムの吸収にも影響を与える可能性があり、長期的な過剰摂取は全身のミネラルバランスを崩す原因となります。
胃のムカつきや吐き気などのリスク
亜鉛サプリメントを摂取する際、最も多く報告される副作用が胃腸の不快感です。
空腹時に亜鉛サプリメントを摂取すると、胃酸と反応して塩化亜鉛が生成されます。この塩化亜鉛は胃粘膜に対して刺激性があり、以下のような症状を引き起こします。
- 胃のムカつき、胸やけ
- 吐き気、嘔吐
- 胃痛、腹部不快感
- 食欲不振
症状を防ぐためには、必ず食事と一緒に、または食後すぐに亜鉛サプリメントを摂取することが重要です。一度に大量摂取するのではなく、分割して摂取することも症状の軽減につながります。
亜鉛が不足しやすいタイプの人
現代社会には、知らず知らずのうちに亜鉛不足に陥りやすい生活パターンがあります。以下に該当する方は、特に注意が必要です。
ストレスや疲れを感じやすい人
慢性的にストレスを抱えている人は、亜鉛不足のリスクが特に高くなります。
ストレスがかかると、体内では「活性酸素」が大量に発生します。この活性酸素は細胞を傷つける有害な物質で、除去するために「スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)」という抗酸化酵素が働きます。この酵素の構成成分として亜鉛が必要なため、ストレスが続くと亜鉛の消費量が増大するのです。
仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、家事や育児の負担など、日常的にストレスを感じている人は、通常よりも多くの亜鉛を必要としています。「最近疲れが取れない」「イライラしやすくなった」という人は、亜鉛不足が原因かもしれません。
また、ストレスは胃腸の働きを低下させ、亜鉛の吸収率も下げてしまいます。つまり、ストレスは亜鉛の消費を増やすと同時に、吸収を妨げるという二重の悪影響があります。
偏った食生活をしている人
食生活の偏りは、亜鉛不足の最も大きな原因の一つです。
ベジタリアンやビーガンの方は、特に亜鉛不足に注意が必要です。植物性食品にも亜鉛は含まれていますが、動物性食品と比較すると含有量が少なく、吸収率も低いという問題があります。
極端なカロリー制限や、特定の食品だけを食べる偏ったダイエットは、亜鉛不足を招きやすいです。特に、炭水化物だけを極端に制限する糖質制限ダイエットや、脂質を完全にカットするダイエットは要注意です。
インスタント食品、冷凍食品、ファストフードなどの加工食品には、保存料として使われるリン酸塩が含まれており、これが亜鉛の吸収を妨げます。また、これらの食品は亜鉛含有量自体も少ないため、二重に亜鉛不足のリスクがあります。
飲酒習慣がある人
アルコールと亜鉛の関係は複雑で、飲酒習慣がある人は亜鉛不足になりやすい傾向があります。
分解する際、肝臓では「アルコール脱水素酵素」が働きます。この酵素の活性には亜鉛が必要で、飲酒量が多いほど亜鉛の消費も増えます。
アルコールには利尿作用があり、尿の量が増えます。亜鉛は尿と一緒に排出されやすいミネラルなので、飲酒により体外への亜鉛の流出が促進されます。
慢性的な飲酒は肝機能を低下させ、亜鉛の代謝や貯蔵能力を損ないます。肝硬変患者の多くが亜鉛欠乏症を合併しているのはこのためです。
日常的にお酒を飲む人、特に毎日飲酒する人や、週末に大量飲酒する人は、意識的に亜鉛を補給する必要があります。
髪・肌・爪のトラブルが気になる人
外見に現れるトラブルは、体内の亜鉛不足を知らせるサインかもしれません。
髪のトラブル
- 抜け毛が増えた
- 髪が細くなってきた
- 髪にハリやコシがない
- 白髪が急に増えた
- 髪の成長が遅い
肌のトラブル
- 肌荒れが治りにくい
- ニキビができやすい
- 傷の治りが遅い
- 肌のくすみが気になる
- 乾燥肌または脂性肌
爪のトラブル
- 爪が割れやすい
- 爪に白い斑点がある
- 爪の成長が遅い
- 爪が薄くもろい
細胞の新陳代謝に必要な亜鉛が不足していることを示しています。特に、複数の症状が同時に現れている場合は、亜鉛不足の可能性が高いと考えられます。
摂るなら効率よく!髪への効果を高める亜鉛の取り方
亜鉛を効率的に摂取するには、いくつかのポイントがあります。ここでは、食事からサプリメントまで、様々な摂取方法とその特徴を詳しく解説します。
まずは食事から!食品で自然に摂る方法
最も理想的なのは、日々の食事から自然に亜鉛を摂取することです。
亜鉛を多く含む食品TOP10(100gあたり)
- 牡蠣(生):13.2mg
- 豚レバー:6.9mg
- 牛肉(肩ロース):5.8mg
- カニ缶:4.7mg
- 牛レバー:3.8mg
- 卵黄:3.5mg
- たらばがに:3.2mg
- プロセスチーズ:3.2mg
- 豚肉(肩ロース):3.0mg
- 鶏レバー:3.3mg
牡蠣は圧倒的に亜鉛含有量が多く、小ぶりな牡蠣2〜3個で1日の推奨摂取量を満たすことができます。ただし、毎日牡蠣を食べるのは現実的ではないので、牛肉や豚肉、卵などを組み合わせて摂取することが大切です。
植物性食品の亜鉛源
- カシューナッツ:5.4mg/100g
- アーモンド:3.6mg/100g
- 納豆:1.9mg/100g
- 豆腐(木綿):0.6mg/100g
- そば:1.0mg/100g
植物性食品だけから十分な亜鉛を摂取するのは難しいですが、これらを組み合わせることで摂取量を増やすことができます。
医師に相談してサプリを処方してもらう
医療機関で亜鉛サプリメントを処方してもらうメリットは、安全性と確実性です。
医療機関での流れ
- 問診・診察
- 血液検査(血清亜鉛値の測定)
- 結果に基づいた処方
- 定期的なフォローアップ
医療用医薬品として処方される亜鉛製剤には「ポラプレジンク」や「酢酸亜鉛」などがあります。これらは品質が保証されており、医師の管理下で安全に摂取できます。
血液検査により実際の亜鉛レベルを確認できるため、本当に亜鉛不足なのか、どの程度不足しているのかを客観的に判断できます。血清亜鉛の基準値は80〜130μg/dLで、60μg/dL以下は明らかな欠乏状態とされています。
保険適用になる場合もあり、費用面でもメリットがあります。特に、味覚障害や慢性肝疾患など、特定の疾患に伴う亜鉛欠乏症の場合は保険診療の対象となります。
市販サプリを個人購入して摂取する
ドラッグストアやインターネットで手軽に購入できる市販サプリメントも選択肢の一つです。
市販サプリメントの種類
- 亜鉛単体サプリ:1粒あたり10〜15mgの亜鉛を含有
- キレート亜鉛:吸収率を高めた亜鉛サプリ
- 亜鉛含有マルチミネラル:他のミネラルとバランスよく配合
市販サプリメントは手軽に始められる反面、品質のばらつきがあることに注意が必要です。極端に安価な製品は、表示通りの亜鉛が含まれていない場合もあります。また、医師の管理がないため、過剰摂取のリスクもあります。
マルチビタミン・ミネラルでバランスよく補う
亜鉛単体ではなく、マルチビタミン・ミネラルサプリメントを利用するのも良い方法です。
マルチサプリメントのメリット
- 他の栄養素との相乗効果が期待できる
- ミネラルバランスが考慮されている
- 過剰摂取のリスクが低い
- コストパフォーマンスが良い
髪の健康に特に重要な栄養素の組み合わせ
- 亜鉛+ビタミンB群:タンパク質代謝を促進
- 亜鉛+ビタミンC:コラーゲン生成をサポート
- 亜鉛+鉄:貧血予防と酸素供給の改善
- 亜鉛+ビオチン:髪の成長を促進
ただし、マルチサプリメントに含まれる亜鉛量は5〜10mg程度と少なめなので、重度の亜鉛不足の場合は不十分かもしれません。
調理で失われにくい摂り方のコツ
亜鉛は調理方法によって失われやすい栄養素です。効率的に摂取するための調理のコツをご紹介します。
亜鉛は熱に比較的強く、焼いたり炒めたりしても大きな損失はありません。肉類は焼くことで水分が抜け、100gあたりの亜鉛濃度はむしろ高くなります。
蒸し調理は栄養素の流出が少なく、亜鉛を効率的に摂取できます。特に魚介類の蒸し料理はおすすめです。
一方、 亜鉛は水溶性のため、茹で汁に流出してしまいます。煮物を作る場合は、煮汁も一緒に摂取できる料理(スープ、シチューなど)がおすすめです。
吸収率を高める食べ合わせ
- ビタミンC(レモン、ブロッコリー)と一緒に摂る
- 動物性タンパク質と組み合わせる
- クエン酸(梅干し、酢)を活用する
吸収を妨げる組み合わせを避ける
- 食事中の緑茶、コーヒーは控える
- カルシウムサプリとの同時摂取は避ける
- 食物繊維の過剰摂取に注意
亜鉛を摂るときに注意したいポイント
亜鉛を安全かつ効果的に摂取するために、押さえておくべき重要なポイントがあります。
摂りすぎには注意!1日の目安量を守ることが大切
適切な亜鉛摂取量を知ることは、健康維持の第一歩です。
日本人の食事摂取基準(2020年版)による推奨量
年齢・性別 | 推奨量 | 耐容上限量 |
---|---|---|
成人男性 (18〜74歳) | 11mg/日 | 40〜45mg/日 |
成人女性 (18〜74歳) | 8mg/日 | 35mg/日 |
妊婦 | +2mg/日 | 35mg/日 |
授乳婦 | +4mg/日 | 35mg/日 |
推奨量は、健康を維持するために必要な最低限の量です。一方、耐容上限量は、これを超えて摂取すると健康被害のリスクが高まる量を示しています。
サプリメントを利用する場合は、食事からの摂取量も考慮する必要があります。日本人の平均的な食事からは、男性で約9mg、女性で約7mgの亜鉛を摂取しているとされています。つまり、サプリメントで補う場合は、不足分の2〜5mg程度で十分なケースが多いのです。
空腹時の摂取は控えて胃への負担を軽減
亜鉛サプリメントによる胃腸障害を防ぐには、摂取のタイミングが重要です。
理想的な摂取タイミング
- 食事中または食直後
- 朝食後が最も吸収率が高い
- 就寝前は避ける(胃酸分泌が少なく刺激が強い)
空腹時に亜鉛を摂取すると、胃酸と反応して塩化亜鉛が生成され、胃粘膜を刺激します。特に起床直後や就寝前の摂取は避けましょう。
もし胃の不快感を感じた場合の対処法
- すぐに食べ物を摂る(クラッカーやパンなど)
- 多めの水を飲む
- 次回から摂取量を減らす
- 分割して摂取する(朝夕2回に分けるなど)
サプリを併用する場合は重複摂取に注意
複数のサプリメントを摂取している人は、亜鉛の重複に特に注意が必要です。
亜鉛を含む可能性があるサプリメント
- マルチビタミン・ミネラル
- 育毛サプリメント
- 男性向け活力サプリメント
- プロテインサプリメント
- 美容系サプリメント
例えば、マルチビタミンに10mg、育毛サプリに15mg、亜鉛単体サプリに15mgが含まれている場合、合計40mgとなり、耐容上限量に達してしまいます。
サプリメントを併用する際のチェックポイント
- 各サプリメントの成分表示を確認
- 亜鉛の総摂取量を計算
- 重複している場合は、どれか一つに絞る
- 不明な場合は薬剤師に相談
医師に相談してから始めるのが安心
以下のような場合は、必ず医師に相談してから亜鉛サプリメントを始めましょう。
医師への相談が必要なケース
持病がある人
- 糖尿病(亜鉛がインスリン分泌に影響)
- 腎臓病(ミネラル代謝に問題)
- 肝臓病(亜鉛代謝に影響)
- リウマチなど自己免疫疾患
薬を服用している人
- 抗生物質(テトラサイクリン系、キノロン系)
- 利尿薬
- 関節リウマチ治療薬
- 骨粗しょう症治療薬
その他:
- 妊娠中・授乳中の女性
- 18歳未満の未成年
- 他のミネラルサプリを服用中
- アレルギー体質
医師に相談する際は、現在の症状、服用中の薬、摂取しているサプリメントなどを正確に伝えることが大切です。必要に応じて血液検査を行い、実際の亜鉛レベルを確認してもらうこともできます。
亜鉛は髪にとって大切!正しい摂り方で薄毛への効果が期待できる栄養
亜鉛は、髪の主成分であるケラチンの合成に不可欠な栄養素であり、毛母細胞の分裂や頭皮環境の改善にも重要な役割を果たしています。現代人は食生活の変化やストレスなどにより亜鉛不足に陥りやすく、それが抜け毛や薄毛の一因となっている可能性があります。
ただし、亜鉛は「髪を生やす魔法の栄養素」ではありません。あくまでも髪が健康に育つための土台を整える栄養素であり、不足している場合に補うことで効果が期待できるものです。すでに十分な亜鉛を摂取している人が、さらに大量に摂取しても髪が劇的に増えることはありません。
亜鉛だけでなく、タンパク質、ビタミンB群、鉄分など、他の栄養素もバランスよく摂取することが、健康な髪を育てる秘訣です。また、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理など、生活習慣全体を見直すことも重要です。
もし薄毛や抜け毛が気になる場合は、まず医師に相談し、原因を特定することから始めましょう。亜鉛不足が原因の一つである場合は、適切な補給により改善が期待できます。