人気女優が告白した遺伝性のがんとは
アメリカを代表する女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが「がんを予防するため両乳房を切除した」という衝撃的な話題が飛び込んできたのは、2013年5月だった。なぜ健康な状態にもかかわらず乳房の切除を決断したのか。彼女の場合、BRCA1という遺伝子に変異が見つかり、その結果、生涯で乳がんが発症するリスクが87%あるとの診断を受けたという。
リスクはともかく、では、実際には「BRCAの変異」によるがんは、どの程度の割合で発生しているのだろうか。乳がんや卵巣がんのうち遺伝性といわれているものが5〜10%あり、そのうち主な遺伝子としてBRCA1、BRCA2が特定されている。このような遺伝性乳がん・卵巣がん症候群は、HBOC(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome)とも呼ばれている。HBOCの場合、遺伝子変異を受け継いでいない人と比べ、発生の確率は10倍以上も高くなるという。
一般に、多くのがんは遺伝性ではないが、若い時期に罹患したり、両側の乳がん、多発性の乳がん、卵巣がんと乳がんの両方、あるいは男性が乳がんなどにかかった場合、BRCA1・2の変異による遺伝性が疑われる。例えば、BRCA1・2の遺伝子の変異を持つ女性に男女1人ずつの子供がいると、遺伝子の変異を受け継ぐ可能性は性別に関係なく、2人の子供それぞれが50%の確率となる。HBOCには遺伝性のいくつかの特徴があるため、がんの既往歴や家族歴などからBRCA遺伝子変異が疑われる場合には、遺伝カウンセリングの後に、確定診断の目的で遺伝子検査が検討されることになる。
日本HBOCコンソーシアム
HBOCに関わる医療関係者の研究団体。日本のHBOCの医療システムの構築、提案、普及に向け2012年に発足。HPには、検査施設などの情報が載っている。http://hboc.jp/ (写真提供:日本HBOCコンソーシアム)