医療の現場からがん治療の最前線を伝える新しいチャレンジ
いまやがんに関する情報はインターネットで手軽に入手できる時代。しかし、そのすべてが正しい情報とは限らないのが現状だ。そこで、患者さんにとって本当に必要かつ有益な情報や最新の情報を発信し、“がんの撲滅”を目指すべく、東京女子医科大学脳神経外科・先端工学外科の林基弘講師を中心に専門医や現場医療者が「がん撲滅サミット」を旗揚げした。
これまでもがんに関する情報発信や勉強会は数多く行われてきたが、多くの場合は患者さんの家族会などを中心に運営されている。今回のように、現場の医療者が中心となるのは珍しいケースとなる。
そして、その記念すべき「第1回がん撲滅サミット」が、2015年6月9日にパシフィコ横浜で開催され、医療関係者や一般の参加者ら約850人が参加した。
この取り組みは、開催前より国からの注目を集めており、政府関係者らも出席。また、高円宮妃久子さまが出席され、がん撲滅に向けて「おことば」を述べられた。
プログラムでは、最新のがん治療や研究成果を紹介する学術講演や、最先端のがん治療に携わる医師で結成された「匠ドクターズ(http://cancer-summit.jp/interview/)」による、来場者の質問にその場で答えていく「公開セカンドオピニオン」を開催。一般参加者からのがん治療の悩みに対してアドバイスを行った。
がん撲滅サミットは第2回の開催も予定されている。
放射線治療によって免疫力が高まる「アブスコパル効果」とは
また、注目を集めたのが、福島県立医大放射線腫瘍学講座の鈴木義行教授による講演で紹介された「アブスコパル効果」だ。
アブスコパル効果とは、放射線治療において、ターゲットのがんに放射線を照射した際に、照射されていない離れた場所にある転移腫瘍にも消滅・縮小の効果が見られることを言う。
これは放射線照射によって壊されたがん細胞を糧に、体内の免疫力が高まり、離れた場所の腫瘍を体内の免疫細胞が攻撃するメカニズムによるものであり、「放射線治療を行うと、がんに対する免疫力も同時に高まるということがわかってきた」と説明した。放射線治療のアブスコパル効果は通常は極めて稀な現象だが、免疫力を高めてがんを撃退する免疫療法と放射線治療を併用すると約半数の患者でこうした効果が表れたとの研究事例を紹介し、2つの治療が好相性であること、また、世界中で放射線と免疫療法を組み合わせた臨床試験が行われていることを紹介。最後に「全身転移されていても、まだまだ諦めなくていい。これからはそういう時代です」と力強いメッセージを残した。
●がん撲滅サミット事務局
http://cancer-summit.jp/
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