治療中の暮らしサポート・ケア

がん患者が直面する「お金の悩み」をサポート。「おさいふRing」が聖路加国際病院でスタート

2015年8月17日

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がん患者のお金の問題を共有して解決に向かう「おさいふ Ring」

がん患者にとって、「お金の問題」は想像以上に深刻だ。「治療費はどれくらい?」「国が助けてくれる制度や民間の保険はどんなものがあるんだろう?」――数え上げればきりがない。ただでさえ家計を圧迫するのに、がんを理由に退職や休職、転職を余儀なくされるケースも見受けられ、収入に与える影響はとても大きい。こういった課題をどのように解決すればいいのだろうか…。

そんな、がん患者のお金にまつわる悩みをサポートするためのグループ勉強会「おさいふRing」が、7月より聖路加国際病院(東京都中央区)で始まっている。同病院では、これまでもがん相談支援室が中心となり、がん患者の治療と仕事の両立・就労を支援する「就労Ring」を開催するなど、患者の支援に取り組んでいる。

「がん治療は長期化、高額化の傾向があり、それこそ一人ひとりで経済事情も違ってきます。治療費はまかなえても、暮らしを支える日々のお金はどうすればいいのかなど、将来が見えずに不安を抱く方はたくさん。だからこそ、5年~10年先を見たマネープランが求められます」
こう話すのは、「おさいふRing」の中心的アドバイザーでファイナンシャル・プランナー(FP)の黒田尚子さん。自身も6年前に乳がんと診断され、右乳房を全摘した過去がある。
「公的制度の使い方、収入の確保、日常のやりくり、困っていることなど、聞きたいことはあるはず。『おさいふRing』では、専門家が一方的にアドバイスをするのではなく、同じ悩みを持つ方が集まり話し合いながら解決策を見い出すことが目的です」(黒田さん、以下同)

「おさいふRing」は1コース3回実施され、初回はがんとお金の問題について黒田さんが講義、2回目は参加者の悩みや課題についてグループディスカッション、3回目は希望者に対して個人面談を行うという流れだ。7月22日夜は、7月コースの第2回目。30代~50代の乳がん経験者5名が参加した。

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がん経験者のFPであるからこそ、伝えられるアドバイス

参加者の多くは罹患・術後から1~2年という、がんサバイバー。仕事ひとつとっても、復職した、あるいは休職して傷病手当金を受け取りながら治療に専念しているなど、直面する課題は十人十色だ。

「乳がんと診断されてから知り合いに会ったり、お見舞いや職場からのカンパへお返しをするなど、意外に交際費がかかっています」と打ち明ける参加者がいれば、「気持ちはわかります。乳がんの生存率は高いとはいえ、いつどうなるかは誰もわかりませんし。ただし、お金に敏感になり、半年、1年先を見直しながらマネープランを組んでいくことも大事です」と、黒田さんはアドバイス。

「傷病手当で生活していますが、お金は出ていくばかり…。お小遣いも月3万5000円と切り詰めています。明るく節約する手段はありますか?」といった悩みも。
「世の中のお父さんは、そんなにお小遣いはありませんよ!」と黒田さんが即答すると、その場は笑いに包まれた。「食事や服装など、外せないことは何かハッキリさせ、メリハリをつけることです。それに、スマホをガラケーにするだけで通信費は抑えられますよ」と、黒田式節約術が光る。
ストレスのあまり散財する参加者に対しては、「気持ちはわかりますが、先を考えると危険。地道に積み立てるなど、預貯金による自家保障(不測の損害や支出に備えて、あらかじめ一定の金銭を自ら積み立てておくこと)も考えましょう」と、FPの経験を活かしてクギを刺す場面も。「ストレスの原因が何かわかると、少しはスッキリすると思う。調べてみましょうよ。」といった声も他から挙がった。

リアルな悩みがある者が集まるだけに、時には真剣に、あるいは笑い、共感しながら話題に花が咲く。「おさいふRing」は、そういった、がん患者の“輪”が広がる場。今後も、9月、11月、2016年1月、3月にも開催予定だ。参加費は無料で、同病院以外でがん治療を受けている人も参加できる。

【問い合わせ先】
聖路加国際病院 相談支援センター がん相談支援室(1階14番)
(月~土 8:30-17:00)
電話:03-5550-7098

また、全国の「がん診療連携拠点病院」には、がんに関わる様々な悩みを相談できる、がん相談支援センターが設置されている。悩みがあるなら、問い合わせてみてはいかがだろうか。
【全国のがん相談支援センターを探す】
がん情報サービス(http://ganjoho.jp/public/index.html

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