ドクターコラム:がん治療の現場から

第4回「”正しい診断”こそが“正しい治療”に繋がり、患者さんを救う」

2015年6月22日

columun_moriyasu4_2私の専門は「内科」。より詳しく言うと「消化器内科」です。私の担当する東京医科大学病院消化器内科では、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、肝臓、膵臓、胆のうといった一連の臓器の診療を行っています。
医師は国家試験を取得し医学部を卒業した後(現在では研修を経て)自分の専門を選択していきます。
私が内科を選択した理由は、当時がん治療が医学界で注目されており、多くの「やるべきこと」がある分野であったということ。また、「画像診断」の黎明期だということが大きく影響しました。

画像診断が切り開いた大きな転換

それまでは、例えば腹痛……「急性腹症」の患者さんを診察する場合には、まず触診。それでわからなければ手術で開腹し、原因を確かめる……という治療方法でした。しかし、当時普及し始めた超音波の電子スキャンやCTにより、開腹しなくても症状の原因を突き止めることができるようになったのです。

もちろん、画像診断を行うためには、がんの形や画像への写り方で診断をする「形態診断」の知識と技術が必要になります。しかし、画像診断という技術の持つ可能性、そして進歩を目の当たりにし、非常にやりがいを感じたこと。また、カテーテル診断の技術などにも可能性を感じたこと。それらから、現在の専門を選んだというわけです。

がんは早期に発見すれば、救える患者さんが増える病気です。
患者さんの自覚症状がない中、がんを発見するためには、医師による「正しい診断」が欠かせません。
画像診断もそうですが、正しい診断のために必要なのは経験と、技術と、研究です。
「正しい診断」こそが「正しい治療」へと繋がる。医師としてキャリアを積む中で、この思いは日々強くなっています。

2人に1人ががんになる時代の医師として

現在、がんは日本人の死因で一番多い病気です。統計から見ると、日本人の約半数……10人ならば5人ががんになり、そのうち3人は亡くなるといわれています。
江戸時代などであれば、5人全員が亡くなっていたでしょう。しかし、そのうち2人が助かっている、それは医学の進歩だと言えます。
しかし逆に考えれば、3人……がん患者さんのうち、全体の6割は助かっていないわけです。
患者さんを救うためには、どうしたら良いか。そのために経験と研究を重ねる、これが私たちの仕事の「やりがい」といえるでしょう。

医療技術の革新は日進月歩。私が医師となってからも、すさまじいスピードで技術革新が進みました。ある意味、画像診断の黎明期にキャリアをスタートでき、その進歩を目の当たりにできたのは、私にとって幸運だったかもしれません。
だからこそ、医師であるかぎり、新たな医療技術に関する情報収集や研鑽(けんさん)は果てしなく続くものだと思っています。1つでも、多くの命を救うために。

moriyasu森安史典(もりやす・ふみのり)1950年、広島県生まれ。75年、京都大学医学部卒業後、倉敷中央病院、天理よろづ相談所病院、京都大学医学部附属病院で勤務。米国エール大学への留学を経て、96年、京大助教授となり、2000年より東京医科大学病院消化器内科主任教授(現職)。最先端技術を導入した肝臓疾患の診断、治療に定評がある。09年より瀬田クリニック東京非常勤医師として、がん免疫細胞治療の診療にも取り組む。趣味はゴルフ。(取材時現在)

東京医科大学病院消化器内科ホームページ
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/syoukakinaika/index.html
瀬田クリニック東京ホームページ
http://www.j-immunother.com/group/tokyo

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