読者の皆さま、はじめまして。「東邦大学外科学講座・医療センター大森病院」の島田英昭です。消化器、特に上部消化管と言われる胃・食道のがん治療を専門にしており、同病院の消化器センター外科で教授を務めています。今回から「消化器系がん」とその治療について、コラムを連載することになりました。どうぞ、よろしくお願いします。
さっそく、治療に関する話題といきたいところですが、私のことをご存知ない読者も大勢いらっしゃるでしょうから、第1回目は自己紹介も兼ねて、私の勤務先病院についてお話ししますね。
東邦大学医療センター大森病院は、許可病床数971床(2015年12月1日現在)の、東京城南地区エリアで医療連携を担う中核病院のひとつです。同エリアの人口はおよそ250万人ですから、かなりの広範囲をカバーしていて、外来患者数は1日平均2403人、入院患者数1日平均865人、年間の手術件数は8804件(すべて2014年度)という規模を誇ります。患者さんの年代も幅広く「地域密着型大学病院」がキャッチコピー。私は親しみを込めて「下駄履きでも行ける大学病院」と呼んでいます(笑)
東邦大学医療センター大森病院について
歴史は古く、1925年に「帝国女子医学専門学校」の付属病院として開院し、昨年には90周年を迎えました。大学病院ですから教育施設としての役割もあり、医学部学生などの実習も行っています。
また、一刻を争う重篤な患者さんに対応する「第三次救急病院」の指定も受けています。
ここ大田区は、中小零細の工場が残り、下町情緒漂う町が点在する土地。ファミリー世帯だけではなく単身者もたくさんいますし、医療ニーズの高い高齢者も多い。私達は地域医療を担う中核病院として、積極的な受け入れに取り組んでいます。
私が勤務する消化器センター外科は、その名の通り、食道から肛門までの消化貴全般の疾患を扱う診療科で、「食道・胃外科」「肝胆脾外科」「大腸・肛門外科」にわかれています。
2009年10月から、食道・胃外科グループの責任者(教授)として千葉県がんセンターから赴任いたしました。これまでの実績は、病院全体で、食道がんの切除手術を500件程度、胃がん切除手術は2000件ほど、新規で診る食道がんの患者さんは年間約80人、胃がんは200人を超えます。
特徴は、外科と内科の垣根があまりなく、お互いの患者さんを一緒に診ていることですね。外科医と内科医の間で円滑なコミュニケーションがあると、お互いの専門を活かすことができるので、患者さんにとってより的確な治療方針を決めることができます。こういった環境は非常に患者さんのためになっていると思います。
医学部教育は、もうひとつの仕事の柱
医学部教育も重要な仕事です。教育内容は3年生までは座学が中心で、4年生になると100人規模の座学もあれば、5~6人程度のスモールグループで実習主体のカリキュラムもあります。5~6年生は実習メインで学ぶという内容。
私は赴任してから、治療と並行して教鞭も執り続けています。大学院でも、消化器外科学、臨床腫瘍学、先進治療学などを担当し、研修医の指導も。各学年50~60人いますから、一般的な中核病院の10~20名に比べると数は多く、教育や研究に割く時間が多いのも大学病院の特徴です。うちの学生は真面目でやる気のある子が多いと思います。学生や若い研修医とディスカッションしていると、逆にこっちがパワーをもらうこともありますね(笑)
いかがでしょうか。ざっとお話しいたしましたが、これが私の勤務する東邦大学医療センター大森病院というところです。臨床だけではなく教育も担うという、大学病院としての役割もありますが、決して敷居が高いわけではなく、患者さんからしても「何か困ったことあればここで診てもらおう」といった病院です。それこそ、普段着・下駄履きで来るお爺ちゃん、お婆ちゃんもいますし、地域密着で日々、診療にあたっています。
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科教授(食道・胃外科担当)。1984年、千葉大学医学部卒業後、同附属病院第二外科入局。87~91年、同大学院医学研究科博士課程(外科系)、91年~93年、マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学外科研究員。97年、千葉大学附属病院助手(第二外科)、02年、千葉大学院医学研究院講師(先端応用外科学)、08年、千葉県がんセンター主任医長(消化器外科)。08年、千葉大学医学部付属病院疾患プロテオミクス寄付研究部門客員教授(消化器外科)、09年10月より、現職へ。胃がんや食道がんの専門医として評価が高い。(取材時現在)
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/gastro_surgery/index.html