がん治療と食事

4日以上便が出ない場合は便秘を疑う。2種類の食物繊維と水分をよく摂る

2015年4月7日

一般的に食事をしてから便が排出されるまでには24〜48時間を要し、4日以上排便がないと便秘が疑われます。がん患者さんの場合、食欲不振などにより食事量や水分摂取量が少なかったり、運動不足や薬剤の副作用が原因で腸のぜん動運動が鈍ると、便秘になる可能性が高くなります。

水分と食物繊維をしっかりと摂り、乳酸菌などで腸の働きを整えると良いでしょう。特に薬の副作用に悩む時期は、嘔吐(おうと)などで水分が失われやすいため、意識して水分を摂る必要があります。食事で摂れる水分以外に、1〜2リットルの水分を少しずつこまめに摂るように心掛けましょう。

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一方、食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、前者は水に溶けてネバネバするため、軟便形成を促す作用があります。また、後者は、水分を吸収して膨らむため、便のカサを増して便通を整える作用が期待できます。

便秘の予防や解消には両方の食物繊維を合わせて、1日20グラム以上を摂ることを目標にしますが、これは食の細い方にとってはかなりの量です。少ない量で効率よく摂取するために、白米を玄米や麦飯に替える、食材をポタージュやジュースにするなど、工夫しましょう。お茶やスープに溶かすだけで食物繊維が摂れる市販の食品を活用するのも一つの方法です。

 

食物繊維の種類

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快適な便通を保つポイント
(1)適量の食物繊維(1日20g以上)を目標とする。
(2)排便を促すためにも、水分を十分に摂取する。1日を通してこまめに摂ると良いでしょう。(食事中の水分も含め『標準体重×30㎖以上』が理想)
(3)腸の働きを良好に保つ。(運動不足、緊張、ストレスも腸の動きを鈍らせる原因に)
(4)便意を慢性的に我慢しない。

ボリューム控えめでも食物繊維がたっぷり
普通食の1.5倍の食物繊維が摂れる便秘対策メニュー

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A 豚肉の二色巻き
彩りが良く、肉と野菜が一度に摂取できる

●材料(2人分)

豚肉(もも薄切り)…120g(1人当たり30g×2枚) 塩、コショウ…少々 小麦粉…適量 インゲン…4〜6本 ニンジン…40〜60ℊ バター、サラダ油…各小さじ1/2 酒…大さじ1 しょうゆ…少々 ポン酢…小さじ2

●作り方

1.インゲンは両端を除いて5㎝ほどの長さに切り、ニンジンは皮をむいて5㎜角の拍子木切りにし、インゲンと長さをそろえて下ゆでする。

2.豚肉に塩、コショウで下味を付けたら、ゆでたインゲンとニンジンを巻く(巻き終わりに余裕をもたせる)。肉がはがれないように全体に小麦粉をまぶす。

3.フライパンにサラダ油をひき、中火〜強火で、巻き終わり部分を最初に焼き固める。コロコロ転がし、肉の色が変わったら、酒、しょうゆ、バターを入れて水分がなくなるまで焼く。

4.包丁で半分に切り分け、器に盛り付けたら、好みでポン酢をかける。

ポイント
巻く野菜はゴボウやキノコ類など、好みで変えてよい。巻く具材によって、食物繊維の量が調整できる。

 

B ゴボウのポタージュ
硬い食材は食べやすいポタージュに

●材料(2人分)
ゴボウ…1本 タマネギ…1/2個 サラダ油…小さじ1 水…160㎖ クリームシチューのルー…1かけ 牛乳…160㎖ 塩・コショウ…各少々 万能ネギ…適量

●作り方

1.ゴボウは皮をこそいで、薄い輪切りにし、水にさらし、あく抜きをする。タマネギは薄切りにする。

2.鍋にサラダ油をひき、タマネギを入れて透明になるまでよく炒める。ゴボウを加えてさらに炒め、水を入れて煮込む。ゴボウが軟らかくなったらミキサーにかける。

3.(2)を鍋に戻し、クリームシチューのルーを入れてとろみをつけたら、牛乳を加え、塩、コショウで味を調える。

4.(3)のポタージュを器に盛り付け、小口切りにした万能ネギを浮かべる。

ポイント
不溶性食物繊維が豊富な食材は一般的に硬いので、ポタージュにすると食べやすい。ゴボウの代わりにトウモロコシ、タケノコ、ブロッコリーなどもおすすめ。

 

C 玄米ご飯
食物繊維の量は白米の8倍以上

玄米を水ですすいでゴミを洗い流したら、玄米の1.7〜1.9倍の水を入れて、7〜8時間(一晩)、水につけておく。炊飯は精白米モードと玄米炊きモードのどちらを選んでもよい。

ポイント
食物繊維、ビタミン類が豊富。ただし表面が硬く厚いので、十分に水分を含ませておく。玄米が苦手な人は白米にして、ヒジキなど、食物繊維を豊富に含む食材を混ぜて炊いてもOK。

 

D レンコンの炒め煮
不溶性食物繊維がたっぷり摂れる

レンコンの皮をむき、薄い乱切りにしたら酢水にさらす。生シイタケは軸といしづきを除き、薄いそぎ切りに。コンニャクは一口大にちぎっておく。鍋にサラダ油をひいたら、コンニャクとレンコンを炒め、さらに生シイタケを加えて炒める。火が通ったら、しょうゆ、酒、砂糖(2:2:1)で味付けをして、汁気がなくなるまでいり煮する。キヌサヤなどをのせて盛り付ける。

ポイント
レンコンの下ごしらえに電子レンジを使うと時短に。

 

E キャベツの甘酢漬け
酢を利かせて食べやすく

キャベツは芯を取り除き、食べやすい大きさに切って下ゆでする。キュウリは薄い小口切りにして塩を振り、しんなりしたら水気を絞る。キャベツとキュウリに酢と砂糖(1:1)を合わせた調味料を回しかけて味がなじんだら器に盛る。

ポイント
キャベツには水溶性食物繊維が豊富。ラップをかけて電子レンジで2分ほど加熱してもよい。

 

F ピーチフローズンヨーグルト
ヨーグルトで腸内環境を整える

ピーチジュースとヨーグルト(1:1)をよく混ぜ合わせ、バットに流し入れたら、冷凍庫で冷やし固める。途中2〜3回(30〜60分に1回)全体をかき混ぜて空気を抱き込ませる。ほどよく固まったら器に盛り付け、モモを適当な大きさに切って添える。

ポイント
リンゴやオレンジなど、好みの果物、野菜ジュースを使ってアレンジも可能。時間がないときは冷凍しなくてもよい。

 

vol5_food04食欲がない人でも食べられるように配慮して、食物繊維が豊富でもボリュームは控えめなレシピに。また、軟らかく調理したり、ミキサーでポタージュ状にしたり、消化の悪い不溶性食物繊維も安心して食べられるように工夫してある。

 

 

柏の葉料理教室 開催中!
国立がん研究センター東病院栄養管理室(千葉県柏市)主催で、がん治療に伴う諸症状に悩む患者さんやその家族を対象とした「柏の葉料理教室」が開催されています。
開催日:原則として第2・4木曜日
参加費:材料費として500円
申し込み・問い合わせ:国立がん研究センター東病院 栄養管理室
TEL:04-7134-6909(3日前までに)

落合由美 国立がん研究センター東病院栄養管理室長

おちあい・ゆみ●国立東京第二病院・栄養士、国立がんセンター中央病院・栄養係長などを経て、2008年より現職。近刊に柏の葉料理教室で紹介したレシピをまとめた『がん患者さんのための国がん東病院レシピ』(共著、法研)がある。(取材時現在)

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