がん治療と食事

つらい口内炎には「旨味」や「香り」を使い刺激を和らげた食事を

2014年12月2日

がん治療中の口内炎のときの食事の工夫

抗がん剤治療や放射線治療の副作用によって、口腔内の正常な粘膜がダメージを受けると、口の中が炎症を起こし、口内炎ができます。さらに、唾液が出づらくなることも多くみられ、口腔内が乾燥すると衛生状態も悪化。免疫機能の低下なども影響し、症状を助長させます。

抗がん剤治療の場合、治療後2〜10日目で症状が現れますが、3〜4週間で回復していきます。その間、口の中が痛いからと食事を食べないでいると、栄養不足になり、口内炎の治りも悪くなるという悪循環になります。食べやすい食事を工夫して栄養を摂り、食後は口腔ケアで衛生状態を保つなどして、悪化させないようにしましょう。

食事面の工夫としては、患部を刺激しないこと。味付けでは、醤油などの味の強い調味料を控え、だしなどの旨味と香りで、薄味でもおいしく仕上げましょう。また、調理法にもひと工夫を。今回のレシピのように、圧力鍋を利用して、舌先で崩れる程度までやわらかく煮込むのもよいでしょう。

また、ビタミンB群は、口内炎の予防や治癒のために効果的な栄養素です。粘膜を修復したり、細菌への抵抗力を高めるなどの働きがあります。鰻、魚介類、レバー、卵、納豆、乳製品、ホウレンソウなどに多く含まれるビタミンB2は、新陳代謝を促し、粘膜の健康を保ちます。

 

刺激物を控える

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抗がん剤の副作用による口内炎は、口全体に広がって、触れると出血する場合もあります。ですから、患部にまとわりつくような食材や味の濃い食材は控えましょう。とくにアルコールは刺激が強いので絶対に避けましょう。

 

口内炎の患者さんでも食べやすい、やわらか調理6品

旨味をプラスすればおいしいメニューに!

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A 圧力鍋でつくる野菜のやわらか煮
圧力鍋で短時間で簡単にやわらか調理
●材料(2人分)

キャベツ…80g ニンジン…1/3本 水…100㎖ 固形コンソメ1/4個

●つくり方

1.キャベツはざく切り、ニンジンは皮をむいて輪切りにする。

2.圧力鍋にキャベツ、ニンジン、水、コンソメを入れ、蓋をして火にかける。加圧状態になり5分程度煮たら、火を止める。

3.圧力が下がったら蓋を開け、器に盛り付ける。

 

B しっとり鮭のクリーム煮
クリームでやわらかな仕上がり

●材料(2人分)

サケ…大1/2切れ×2 塩…少々 白ワイン…小さじ1 小麦粉(サケ用)…小さじ2 タマネギ…1/5個 小麦粉(ソース用)、サラダ油・バター…各小さじ1 水80㎖ 固形コンソメ…1/3個 牛乳…60㎖ 白ワイン…小さじ1 塩…少々 ローレル…適量 生クリーム…小さじ2 ホウレンソウ…2株 茹で塩…適量

●つくり方

1.サケは塩、白ワインを振りかけておく。タマネギは粗みじん切り、ホウレンソウは塩茹でし一口大に切っておく。

2.サケの水気をふき取り、小麦粉を表面につける。フライパンにサラダ油、バターを熱して焼く。同時に端の方で、タマネギ、小麦粉を炒める。

3.タマネギが透き通り、サケの両面をきつね色に焼いたら、水、固形コンソメ、牛乳、白ワイン、ローレルを入れて煮る。

4.サケを取り出し、皿に盛る。煮汁にホウレンソウ、生クリームを加え、適度なとろみの加減になるまで煮詰めたら、塩で味を調える。

5.火からおろし、ローレルを取り出し、サケの上にかける。

 

C バターライス
バターの風味で薄味でもおいしく

●材料(1合分*炊きやすい分量)

精白米…1合 水…1合分 タマネギ…1/4個 塩…少々 バター…小さじ2 パセリ…適量

●つくり方

1.米を研ぎ、米の分量に応じた水量に合わせる。

2.タマネギはみじん切りにする。パセリは葉を刻み、水にさらした後、水気を絞る。

3.1にタマネギ、塩、バターを加え、炊飯する。炊きあがったら、器に盛り付け、パセリを散らす。1人分として1/3量盛り付ける。

 

D ふっくら長芋とカブのカニ入りとろみ汁
やわらか、つるり、とろとろで食べやすい

●材料(2人分)

ナガイモ…80g カブ…小1玉 カニほぐし身缶…10g だし…300㎖ 塩…小さじ1/4 醤油…小さじ1/3 酒…小さじ1 青ネギ…適量 片栗粉、水…各小さじ1.5

●つくり方

1.ナガイモは皮をむき、一口大に切る。カブは皮をむき、くし形に切る。青ネギは小口切りにする。

2.鍋にだし、カブを入れて火にかける。

3.ナガイモ、カニほぐし身缶を加え、塩、醤油、酒で調味し、やわらかくなるまで煮る。

4.青ネギを加え、水溶き片栗粉でとろみをつけて器に盛り付ける。

 

E なめらか煮おろしのシラス和え
ダイコンおろしを加熱&とろみで辛みを軽減&なめらか食感

 

F すりリンゴのとろとろプディング
栄養たっぷりのやわらかプリン

 

今回のメニューの栄養量

vol4_ganfood03口内炎を刺激しないよう、薄味を基本に、やわらかさと飲み込みやすさを考えたレシピに。「なめらか煮おろしのシラス和え」は、だし醤油で薄味でも風味豊かに、「すりリンゴのとろとろプディング」は、すりおろしたリンゴを使って食べやすく仕上げた。

口内炎がある方への食事のポイント

Point1 味付けは薄く

● 薄いだけでは物足りないので、香りや旨味、コクをプラスする。

【香り】シソ、レモン・ユズの皮
【旨味】昆布、鰹節、シイタケのだしやチキン・コンソメスープなども
【コク】ゴマペースト、ピーナッツクリーム、バター、生クリーム

⇒ ただ味を薄くするのではなく、だしの旨味を加えたり、柑橘類の皮を使った香り付け、ゴマやナッツ類のペーストでコクをプラスするなどすると、薄味でも味わい豊かに。
Point2 切り方や調理に工夫を

● 皮をむく、薄く切る、細かく切る、隠し包丁を入れるなど。
● 圧力鍋や電子レンジでやわらかい食感に。
● ミキサーなどを使ってペースト状に。
Point3 表面をすべりよく・なめらかに

● 水分を多くし、しっとりと仕上げる。
● あんかけなどのとろみや、ソースを添えて刺激を少なく。
● ゴマ油やオリーブオイルなど香りのあるオイルを使って風味とオイルのなめらかさをプラス。

⇒ 少量ずつ食べられ、飲み込みやすくする工夫を。あんかけにすると、口当たりがなめらかになり、コクも出るのでおすすめ。基本的に、水分を多めに作ると食べやすくなります。

うがいや歯磨きなどの口腔ケアも大切

口の中が痛いからといって、歯磨きなどをしないでいると、口腔内が汚れ、症状が悪化します。口腔ケアは欠かさず行い清潔を保ちましょう。うがいは、保湿用うがい薬などで行い、終わったら唇にもリップを塗り、しっかり保湿を。歯ブラシはヘッドが小さく厚みのないものやスポンジブラシなどを選び、毎食後と就寝前に行いましょう。ただし、メントールやアルコールが含まれたうがい薬や歯磨き粉は刺激が強いので避けたほうがよいでしょう。

 

柏の葉料理教室 開催中!
国立がん研究センター東病院栄養管理室(千葉県柏市)主催で、がん治療にともなう諸症状に悩む患者さんやその家族を対象とした「柏の葉料理教室」が開催されています。
開催日:原則として第2・4木曜日
参加費:材料費として500円
申し込み・問い合わせ:国立がん研究センター東病院 栄養管理室
TEL:04-7134-6909(3日前までに)

落合由美 国立がん研究センター東病院栄養管理室長

おちあい・ゆみ●国立東京第二病院・栄養士、国立がんセンター中央病院・栄養係長などを経て、2008年より現職。近刊に柏の葉料理教室で紹介したレシピをまとめた『がん患者さんのための国がん東病院レシピ』(共著、法研)がある。(取材時現在)

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