化学療法による倦怠感の原因と対処方法
「倦怠感」とは何かというと、だるさ、疲れやすさ、脱力感をはじめ、「やる気が出ない」といった精神的疲労も含まれます。倦怠感は、化学療法を受けているがん患者さんのほとんどに見られる症状で、その原因は様々ですが、主に、炎症や熱、痛みで体力が奪われたり、嘔吐や下痢といった副作用によって栄養が十分に摂れずに脱水や貧血を起こしたりすることが挙げられます。精神的ストレスによる疲れなど、メンタル面も関係してきます。
倦怠感が強い場合の食事の工夫
倦怠感は、繰り返し続いて長引き、食欲を奪います。1日量の食事が摂れないと脱水を起こし、いっそう倦怠感が強まるので、まず、水分を摂ることが大切。最低でも1日に標準体重(㎏)×30(㎖)くらいの量の水分が必要です。しっかり摂れば、疲労物質を排出し、代謝もよくしてくれます。
また、倦怠感があるときは食事自体が負担になるので、食欲を起こす工夫をしてください。食べたいと思ったときに寝たままでも手軽に食べられるよう、つまみやすい小さなおにぎりなどを用意したり、喉越しのよいゼリーなどを常備したりしておくのもおすすめです。また、香りや彩りなど、おいしそうな「見た目」もポイント。なるべく、少量でもカロリーの高いものを選ぶようにしましょう。
<倦怠感の原因>
●貧血●炎症が続き、熱があるため●体力が奪われているため●痛みに耐えることに対する疲労●変化に体がついていけないため●食事が摂れないための脱水症状●精神的ストレスによる疲れ、不眠
<倦怠感に対する対処法>
●倦怠感の症状を客観的に把握し、医師に明確に伝えられるようにする。そのために、症状、いつ起こるか、変化などを日記につける。
●倦怠感が起こるパターンを把握したら、活動と休息のバランスを検討し、1日のスケジュールを調整する。忙しくても、「短時間の休息を多くとる」「夜は十分な休息をとる」ことが大切。
●吐き気や下痢などの副作用で食事がきちんと摂れない場合は、消化がよく、栄養価の高い食事を摂るようにする。特に脱水症状にならないように注意すること。
●マッサージや入浴などで血液・リンパの流れを促進させる。また、無理のない適度な運動が倦怠感を軽くする場合もあるので、医療者と相談してみる。
●がんの治療が続くと、心身ともにストレスがかかるため、気分転換やリラクゼーションが大切になる。自分の好きなリフレッシュ法で自律神経のバランスを整えると、倦怠感の軽減につながる。
<倦怠感が強いときのアプローチ>
●脱水予防のため、水分補給をこまめにする。
●食事時間にこだわらず、自由に食べる。
●いつでも食べられる間食を用意しておく。
(例:おにぎり、パン、カップスープ、カップ麺、缶詰、レトルト食品、ヨーグルト、プリン、クッキー、カステラなど)
●体を起こせない場合に備え、つまんで食べられるものや小さく切ったものを常備。
(例:おにぎり、サンドイッチ、菓子パン、肉まん、ハム、ウィンナー、チーズ、スティック野菜、果物、アイス、ゼリー飲料など)
少量でも栄養満点!さっぱりした酸味で食欲をそそる倦怠感対策メニュー
さわやか青シソジュース
水分もカロリーも摂れる
■材料(2人分)
水…2カップ強 大葉…6枚程度 砂糖…大さじ2 酢…大さじ1.5
■作り方
①鍋に水を入れて沸かし、よく洗った大葉を入れ、3~4分煮出す。
②大葉を取り出し、砂糖を溶かす。
③粗熱が取れたら、酢を加え、冷蔵庫でよく冷やす。最後に、切り刻んだ大葉(分量外)を添えると、香りが立ち、おすすめ。
<ポイント>
口当たりがさっぱりして甘みがあるので、食欲がないときに活用したい。
好みの果実酢にしてもOK。1~2日ほどなら、冷蔵保存も可能。
簡単手作りミニあんまん
作り置きができ、サイズも中身も好みで調整可能
■材料(2人分)
ホットケーキミックス…大さじ5 片栗粉…小さじ1.5 牛乳…大さじ1 サラダ油…小さじ1 こしあん…小さじ4
■作り方
①ボウルに、ホットケーキミックス、片栗粉、牛乳、サラダ油を入れてよく混ぜ、生地を作る。
②台にラップを広げて①の生地をのせ、平らに伸ばしたら、こしあんを包む。
③クッキングペーパーを4~5㎝角に切り、②をのせ、蒸し器に並べて強火で7~8分蒸す。
<ポイント>
中身はこしあんの他に、肉そぼろ、ミートソース、カレー、ハム、ソーセージ、チーズ、煮豆、カスタードクリーム、ようかん、焼き芋、栗の甘露煮、のりのつくだ煮など、好みでアレンジ可能。具材や味を自由に選べるようなメニューだと、食事が楽しくなり、食べたいと思うきっかけにもなる。冷めてもおいしく、多めに作って冷凍保存もできる。
リンゴと野菜のビタミンたっぷり甘酢
ビタミンやミネラルが豊富
さっぱりした口当たりで食欲もアップ
■材料(2人分)
ハクサイ…中1枚 コマツ菜…1/2株 ニンジン…中1/16本 リンゴ…1/10個 黄パプリカ…1/12個 すし酢…大さじ1 白いりゴマ…小さじ1/2 ユズ皮…適量
■作り方
①野菜の下ごしらえをする。ハクサイは千切りにし、ゆでて水気を切る。ニンジンは皮をむいてから千切りにし、ゆでて水気を切っておく。コマツ菜は塩ゆでにして水気を絞ったら、根を落として4~5㎝に切る。
②リンゴは芯をとって皮ごとイチョウ切りにする。黄パプリカは、種とワタを取って薄切りに。ユズの皮は薄くむき、細い千切りにする。
③鍋にすし酢を入れて火にかけ、ひと煮立ちさせる。
④ビニール袋に①と②をいれ、③のすし酢を加える。さらに、白いりゴマも入れ、調味液になじませるようによくもみ込む。
⑤冷蔵庫にしばらく置き、器に盛る。
<ポイント>
1つの皿に野菜や果物がたくさん入っており、少量でもいろいろな栄養が摂れる。野菜は好みのものに代えてもいいが、貧血を予防してくれる鉄分が豊富な、緑黄色野菜を入れるのがポイント。リンゴやパプリカに含まれるビタミンCは、鉄分の吸収をよくしてくれる。酸味のおかげで食べやすく、彩りも鮮やかで食欲をそそる。
柏の葉料理教室 開催中!
国立がん研究センター東病院栄養管理室(千葉県柏市)主催で、がん治療に伴う諸症状に悩む患者さんやその家族を対象とした「柏の葉料理教室」が開催されています。
http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/seminar/about_cooking.html
開催日:原則として第2・4水曜日
開催時間:12:00〜14:00 ※11:50〜受付開始
参加費:材料費として600円
申し込み・問い合わせ:国立がん研究センター東病院栄養管理室
TEL:04-7134-6909(2日前までに)
千歳はるか 国立がん研究センター東病院栄養管理室長
ちとせ・はるか●旧・国立東信病院(栄養士)、国立病院機構東京医療センター(副栄養管理室長)など6カ所の病院を経て、2015年4月より国立がん研究センター東病院栄養管理室長となる。(取材時現在)