「人生は多毛作。たった1度きりだから何通りにも生きたい」
歌手デビューから40年以上芸能活動を続けてきた清水さんだが、この言葉通り、歌手の他、冒険家、実業家、ロードレースライダーなど、様々な顔をもつ。今では歌手やタレントというより、森に入ってチェーンソー片手に木を切ったり、ログハウスを建てたり、そんなアウトドア志向のイメージのほうが強いくらいだ。
「無人島に家を建てて、そこで大勢の子どもたちと原始的な生活を楽しむこともあれば、企業の依頼で社員研修をすることもあります。自分自身がアウトドアライフをエンジョイするだけでなく、みんなの中に眠っている野生のDNAを呼び起こすことも、僕の役目かもしれません」と笑う。
5年後の生存率を50%も保証してくれるならそれで十分です
エネルギーのかたまりのような清水さんが、がんを患ったのは、2008年、58歳のとき。人間ドックに入ったところ、十二指腸に2センチほどのポリープが見つかった。最初の診断は「良性」で、内視鏡による摘出ですむはずだった。だが、摘出部の細胞を調べたところ、「悪性腫瘍」と診断され、結局、7時間に及ぶ十二指腸全摘の手術を受けることになった。
オートバイレースの事故で毎年1度は骨折するような生活が10年も続いていた清水さん。「だから手術には慣れていた」というが、ケガの手術とがんのそれとでは少し勝手が違った。
「どんな大ケガをしても絶対に大丈夫、自分は治るという妙な自信があったのですが、がんになって、自分も不死身ではなく、やはり死ぬんだと思いました……」
しかし、ここで死ぬわけにはいかない。3度目の結婚で授かった待望の男の子はまだ1歳。年老いた両親には、自分の病名を告げることさえはばかられた。
手術に成功しても、5年後の生存率は50%だといわれたが、清水さんは、この数字を前向きに受け止めることにした。
「明日のことは誰にも分からない。5年先の命を50%も保証してくれるなら、それで十分ですよ」