注目の治療・研究

世界初のがん光免疫療法が国内で承認!

監修:神垣隆(かみがき・たかし)順天堂大学大学院 次世代細胞・免疫治療学 特任教授

2021年4月27日

 

 

光と薬の組み合わせでがん細胞をたたく、光免疫療法(イルミノックス治療)と呼ばれる、新しいがん治療が始まることとなりました。

米国国立がん研究所(NCI)の日本人研究者の成果をもとに、楽天などが出資する楽天メディカルが中心となって開発したことでも話題になったこの新しいがん治療法。

世界に先駆けて日本で承認、保険適用となったこの治療について、がん治療を専門とする医師に解説いただきました。

 

がんの患部に光を当てて、がん細胞だけを破壊する治療法

光免疫療法は、ある特定の光に反応する薬を患者さんに投与したうえで、がんの患部に光を当ててがん細胞だけをピンポイントで破壊するという、これまでになかったユニークなしくみの治療法です。

投与する薬は、がん細胞にくっつく性質を持った抗体薬に、光に反応してがん細胞を破壊するエネルギーを出す物質を結合したものです。この薬を投与したうえで、がんの患部に「近赤外線」という人体に無害な光を当てると、薬が化学反応を起こして、くっついているがん細胞だけを破壊します。

 

 

治療の手順としては、まず、患者さんに前出の薬を投与します。投与から20〜28時間後、薬が体中のがん細胞と結合したタイミングで、がんの患部に光を当てます。

光はがんの表面や皮膚の上から当てる方法と、患部に針を刺して、がんの内部から光ファイバーを使って当てる方法の2パターンがあります。光の届く範囲は限られているので、腫瘍の大きさや場所によって、この2つを使い分けたり、組み合わせたりします。

大きいがんには針を複数本指すことで治療できます。薬が光を吸収すると、がん細胞の細胞膜を破壊し、がんが死滅します。

 

頭頸部がんの治療法として国内承認を取得

 

光免疫療法は、2020年9月に頭頸部がん(顔や首の周りにできるがんの総称)を対象に、世界に先駆けて日本で承認されました。

他の臓器などに転移をしていない進行・再発の頭頸部がんの患者さんで、他に治療法がない場合が対象となります。投与する薬剤アキャルックスⓇと、光を照射する医療機器のBioBladeⓇレーザシステムを用いるこの光免疫療法はイルミノックス治療と呼ばれ、2021年初頭から本格的に治療がスタートしています。

この治療が受けられるのは、国立がん研究センター東病院や広島大学病院など、頭頸部がんの専門医がおり、この治療のトレーニングを受けるなどの条件を満たした医療機関です。

なお、1回の治療にかかる医療費は、薬剤費、装置代、手術費などを含め600万円程度とされていますが、保険診療のため、患者さんの自己負担は抑えられています。

 

正常細胞にダメージを与えず、繰り返し治療可能

光免疫療法は、治療効果とともに、副作用の低さも期待されています。
ほかに治療法がない再発頭頸部がんの患者さん30名を対象に海外で実施された治験で、4人(13.3%)のがんが消え、9人(30%)のがんが小さくなり、合わせて40%以上の方たちに効果がみられています。

また、放射線治療では正常な細胞に多少なりとダメージを与えてしまうため、同じ箇所へ照射できる回数は限られていますが、光免疫療法の光は正常細胞にダメージを与えないので同じ場所に何度も使えることも大きな利点です。

この治療では、がん患部における免疫細胞の反応を活性化することから、「免疫療法」という名称がつけられており、全身に広がったがんにも効果が期待されています。ただ、転移したがんへの効果についてはまだ人では確認できておらず、今後の課題になっています。

 

今回の承認は一部の頭頸部がんに限られますが、すでに国内では食道がんや胃がんの治験も進んでいます。将来的には、ほかの部位のがんや早期のがんまで、より多くの患者さんに対象が広がることが期待されます。

神垣 隆
順天堂大学大学院 次世代細胞・免疫治療学 特任教授
かみがき・たかし●1987年、神戸大学医学部卒業。神戸大学医学部附属病院食堂胃腸外科等を経て、2010年、瀬田クリニックグループ臨床研究・治験センター長就任。2017年より順天堂大学大学院医学研究科 次世代細胞・免疫治療学講座特任教授。日本再生医療学会 再生医療認定医、日本消化器病学会 専門医など。(公開時現在)

同じシリーズの他の記事一覧はこちら