がん治療最前線

がん細胞に栄養を送る血管を遮断して 腫瘍を死滅させる「動脈塞栓術(そくせんじゅつ)」

標準治療では効果の上がらない患者さんのために、現在、様々ながん治療の研究が進んでいる。その中で、手術などに比べ、患者さんの体への負担が少なく、副作用もない治療法として注目されているのが血管内治療の1つの「動脈塞栓術」だ。様々ながん種に効果が期待でき、また医療保険が適用されるので、この治療法を選ぶ患者さんが増えている。

血管内治療は、動脈や静脈にカテーテルと呼ばれる細い管を挿し込んで血管の内側から治療する方法で、大きく2つに分けられる。1つは、血管を内側から広げる血管拡張術で、太ももなどの血管にカテーテルを入れ、血栓やコレステロールで狭くなった血管を広げる治療法。すでに一般化した治療法で狭心症や心筋梗塞、また脳血管の病気などに導入されている。

もう1つが動脈塞栓術という治療法で、腫瘍に栄養を送っている血液の流れを止めて、腫瘍が育つのを阻止したり、腫瘍を壊死(えし)させたりする。動脈塞栓術の中でもがん治療として注目されるのが新しい技術を使った動脈塞栓術で、その第一人者が、関西国際空港近くでゲートタワーIGTクリニックを開く堀信一院長だ。

 

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様々ながん種に対応できる日本で唯一のクリニック

動脈塞栓術を行う病院は日本各地にあるものの、肝細胞がんのみを対象とする施設がほとんどで、様々ながん種に対応しているのはこのクリニックだけ。その理由を堀先生は次のように説明する。

「まず設備投資の問題が挙げられるでしょう。この治療は、患者さんの血管に入れた造影剤の流れを画像に映し出しながら行います。ですから血管造影装置とCT装置を組み合わせた装置が必要で、これは高額なうえにメンテナンスの費用もかかる。当院のように民間で、しかもこの治療に特化した病院でなければ、運営が難しいと思われます」

 

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クリニックは、南海電鉄とJR西日本が乗り入れるりんくうタウン駅に隣接するりんくうゲートタワービルの11階にある。2016年の10月には拡張のため、近くのビルに移転の予定。

 

さらに、1.0ミリ以下のマイクロカテーテルを血管内で自在に操作するには高度なテクニックが求められ、どの血管ががん細胞と通じているかを見極めるには長年の経験が必要とされる。

「以前は、血管の流れを止めるのに使う塞栓材料にも問題がありましたが、良質で副作用のない塞栓材料の開発によってクリアされました」。20年以上かけて塞栓材料を開発したのも実は堀先生だ。

「現在、がん患者さんの約5割は、手術や抗がん剤、放射線などによる標準治療で治りますが、あとの5割の患者さんは、悪化の一途をたどったり、再発に悩まされたりしています。他によい治療法はないかと長年研究を続けてきた結果、行き着いたのが血管内治療の1つである動脈塞栓術です。医療保険が適用されるので、患者さんの経済的負担もそれほど大きくはないと思われます」

 

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