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【がん治療による脱毛】化学療法や放射線療法の副作用による「脱毛」について理解しておきましょう

2017年12月27日

どのタイミングでどんな治療をするのか、副作用はあるのか――。がん患者さんは、常にいろいろな悩みや不安を抱えています。副作用でいうと、多くの患者さんを悩ませているものに「脱毛」があります。脱毛は外見上だけの問題ではなく、患者さんの心にまでダメージを与える深刻な問題です。そこで、脱毛の原因から脱毛が始まったときの注意点、回復までの経緯や、ウィッグ(かつら)を使った外見ケアなどについて、2回にわたり紹介していきます。

 

10年前から現在まで患者さんを悩ませる、抗がん剤による脱毛

 

がんを体験した人の悩み上位5位(2003年と2013年比較)
がん体験者のアンケートでも、ここ10年以上「脱毛」が悩みの上位に。患者さんの中には治療に伴う痛みよりも、脱毛などの外見の変化のほうが苦痛という人も少なくない。

抗がん剤や放射線の影響を受ける毛根部

がん治療には、しびれ、むくみ、痛み、脱毛などの副作用を伴うことが少なくありません。特に化学療法や放射線療法によって起こる脱毛は、近年、がん患者さんを悩ませる副作用の上位に挙げられます。

なぜ脱毛が起こるのか。それは毛根部にある毛母細胞と深く関わっています。毛髪などの体毛は毛母細胞の分裂によって成長します。毛母細胞は体の様々な細胞の中でも特に盛んに分裂を行っている細胞ですが、化学療法や放射線療法はこの毛母細胞を壊してしまうため、脱毛が起こるというわけです。

副作用による脱毛では、毛髪だけでなく、まゆ毛やまつ毛、鼻毛なども抜け落ちてしまうので、目や鼻からゴミやホコリが入りやすくなり、まつ毛が切れて痛みが生じるなどのトラブルも起こります。

 

 

髪の毛、まゆ毛、まつげ、鼻毛の脱毛とそれぞれの対策

乳がんの患者さんの8割が経験する、治療の副作用による脱毛

しかし、患者さんにとってショックが大きいのは、やはり髪の毛の脱毛です。

実際に脱毛を体験した人たちは、
「髪の毛がどっと抜けるのを見るのはつらく、いたたまれない日々だった」
「髪の毛が徐々に抜けて、やがて1本もなくなったときには、もうダメだと思った」
「先生にまた生えてくるといわれたが、本当に生えてくるまでは不安だった」
などと治療中の心中を語っています。

脱毛の程度は、使う薬の種類や量によって異なり、また個人差もあるので、他の患者さんと比較して、自分の場合は程度やスピードが違うと感じられることもあります。例えば、乳がんの患者さんでは脱毛を経験される方が多く、その割合は、全体の約8割を占めます。

治療に先立って、医師から「脱毛するかもしれない」といわれた場合は、事前に、室内用のヘアキャップ、帽子やウィッグなどを用意しておくと安心です。特に、治療中も仕事を続ける予定の患者さんは、自分に合っていて、しかも自然に見えるウィッグが必要になることでしょう。

医療用のウィッグを扱っているサロンでは、たくさんの患者さんの事例を見てきた経験から、脱毛時の生活などについてもアドバイスしてくれるところが多くあります。

抗がん剤(化学療法)と放射線治療による脱毛と回復の期間

脱毛が起こりやすい抗がん剤の種類とその程度

個人差はありますが、化学療法や放射線療法を始めて、2〜3週間後から脱毛が始まることが多いようです。下の表には脱毛の可能性のある抗がん剤について、程度別に紹介していますので参考にしてください。
特に乳がんの治療でよく使われる、ドセタキセル、パクリタキセル、アブラキサン、エンドキサンといった抗がん剤は、脱毛が起こる程度が高い抗がん剤です。

 

主な抗がん剤の種類と脱毛の程度

 

治療中に育毛剤を使用しても効果がない

髪の毛が抜け始めると、「シャンプーをすると余計に抜けるようで怖い」というのが、多くの患者さんに共通する不安です。だからといってシャンプーをしないと毛穴が詰まったり、感染症を引き起こしたりすることにもなりかねません。刺激を与えないようにやさしく洗い、頭皮は常に清潔に保つようにしましょう。

また、治療中に育毛剤を使用しても効果はなく、かえって育毛剤の刺激が頭皮によくない場合もありますので、脱毛中は使わないようにしてください。

 

脱毛が始まってからのシャンプーの方法
洗髪後はドライヤーの使用を避け、軟らかなタオルで水分を拭き取る。ブラシでとかす場合は、炎症を起こしている部分に当たらないように注意する。

 

脱毛は辛いけれど、元に戻る日は必ず訪れる

髪の毛が抜けることで大きく変わってしまう見た目のイメージ。それを受け止めるのは患者さんにとってつらいことです。

「もう元に戻らないのではないだろうか」と大半の患者さんは落ち込みます。ダメージを受けるのは体毛より、むしろ心のダメージのほうが大きいといえるかもしれません。自分の外見が変わってしまうことに心がついていけないばかりか、「他人に自分の病気を知られてしまうのでは……」という恐怖から、家に引きこもってしまうケースもあります。

なかには、「髪が抜けるのがイヤだから抗がん剤治療はしたくない」と、最初から治療を拒否する患者さんもいるようですが、副作用を気にするあまり、有効な治療のチャンスを逃すようなことがないようにしなければなりません。

脱毛は体験した人でなければ分からないショックや寂しさを伴い、回復までに時間がかかるのもつらいところです。
現状は、がん治療で起こる脱毛を防ぐ有効な方法は確立されていませんが、仮に脱毛が起こっても、一般的には治療が終わって3~6カ月で発毛が始まるとされ、早い人では2カ月後ぐらいから髪が生えてきます。ごくまれな場合を除き、やがて元の状態に戻り、「髪が伸び、かつらが取れて本当に晴れ晴れした」と感じられる日は訪れるのです。

今は抗がん剤治療が通院で受けられ、治療を続けながら仕事をしたり、外出することも可能な時代ですから、治療中の外見ケアは欠かせません。そこで、次回記事では、ウィッグの選び方や利用法、まゆげの脱毛をカバーするための工夫についてアドバイスします。

参考資料:「学びの広場シリーズからだ編」『抗がん剤治療と脱毛』『放射線治療と脱毛』(発行/静岡県立静岡がんセンター)

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