治療中の暮らしサポート・ケア

ウィッグやまゆ毛メイクを上手に活用。がん治療の脱毛の負担を軽減して自分らしい生活を!

2018年3月22日

がん治療において、患者さんを不安にさせ、悩ませるもののひとつに、治療の副作用による脱毛があります。治療を終えても抜けた毛髪が生えそろうには時間を要しますが、ウィッグ(かつら)などの上手な活用で、負担を軽減することが可能です。近年は、治療を受けながら仕事を続ける患者さんも増えており、治療中の「外見ケア」への関心も高まっています。今回は、失敗しないウィッグの選び方や、まゆ毛メイクのポイントを紹介します。

いろいろなタイプのウィッグが並ぶ医療用ウィッグのサロン。

治療の副作用による脱毛をカバー。広がりつつある「外見ケア」

化学療法や放射線療法の副作用によって、脱毛を体験した患者さんは少なくありません。
がんの告知で大きなショックを受け、そこから様々な治療を乗り越えていかなければならない―。患者さんの心身の負担は相当なもので、そのうえ脱毛などの外見上の変化が起これば、耐えがたく感じるのは当然のことです。

その解決策の1つが「外見ケア」。患者さんのQOL向上のためにウィッグやメイクなどによって外見の変化をカバーすることです。

がん医療の進歩により、最近では、通院治療を受けながら仕事を続ける患者さんが多く、「できるだけまわりの人には病気であることを気付かれたくない」と思う人が増えているようです。

病院の相談室には「どのようなウィッグを選ぶべきか」「ウィッグをどこで購入したらよいか」など、脱毛対策の質問が寄せられ、こうした患者さんの疑問や不安を解消するために、看護師やケースーワーカー向けに、外見ケアの講習会を開く病院も目立ちます。

 

医療用ウィッグとおしゃれ用ウィッグの違い

ウィッグ選びのポイントはいくつかありますが、まず試着をすることが基本です。というのも、患者さんの体験談として、「通信販売のウィッグを買って失敗した」という声もあるからです。通信販売には、手軽に安価なものが買えるというメリットがありますが、届いたものを着けてみるとサイズが合わなかったり、似合わなかったり、また数回洗ったら絡んでしまったというケースもあるようです。

ウィッグにはおしゃれ用と医療用があり、その違いを知っておくことも重要です。

ひと言でいうと、毛髪のない治療中に着用することを前提に作られているのが医療用で、毛髪がある人を対象に作られているのがおしゃれ用。

ですから医療用は、近くから見られてもウィッグと分からないように、分け目に人工皮膚が使用されていたり、びん(耳際の髪)や襟足が長めになっていたり、直接触れる頭皮にダメージを与えないような工夫などもされています。

 

サイズ調整ができることや耐久性が重要な医療用ウィッグ

医療用には「既製品」「セミオーダー」「フルオーダー」の3タイプがあり、使い勝手がよいのは、購入時に好みの長さや形にカットしてくれて、購入後もサイズ調整に応じてくれるセミオーダー以上のもののようです。
患者さんの毛量は、治療に伴ってしだいに抜け、治療が終わると徐々に生えてくるというように変化します。セミオーダー以上の医療用ウィッグは、その調整がきく構造で、販売店の技術者が無料で対応してくれます。

価格は様々なものがありますが、長い場合には2年近く使うことを考えると、耐久性があり、アフターケアもしっかりしているという点で、おしゃれ用よりもしっかり作られている医療用のほうが安心感があるとの見方もできます。納得のいくものを購入するには、ウィッグの専門メーカーのサロンなどを訪れて、試着や相談をしてみるのも1つの方法です。

医療用ウィッグのトップメーカー「スヴェンソン」で、多くのがん患者さんの要望に応えてきた根岸ゆきえさんは、「まだ検討段階でも、サロンにいらして見学や試着だけでもしていただければと思います。医療用のウィッグは特別なものですから、購入するしないに関係なく、私たちも何か患者さんやご家族の役に立てればと思っているんです」といいます。

 

まゆ毛の脱毛には、女性も男性もアイブロウで自然なメイク

まゆ毛の脱毛も顔のイメージを大きく変えてしまう要因です。女性の場合は日ごろのメイクで慣れているため、比較的カバーしやすいのですが、男性の場合は描き方も、購入先も分からない人が多いのではないでしょうか。

描き方については、図を参考にしてください。描く道具は「アイブロウ」と表示された化粧品(男性用でも女性用でもかまいません)で、ペンシルタイプとパウダータイプがあります。

図のように、ペンシルタイプで描いてからパウダータイプでぼかすようにすると自然に見えます。最近は、このような化粧品がコンビニやドラッグストアーでも売っていますので、男性にも購入しやすいでしょう。

男性の外見ケアについて、患者さん本人は気にしていても、ご家族の理解を得るのが難しく、「男なんだから気にしなくても大丈夫」と決めつけているケースもあります。患者さんが高齢の場合は、特にこの傾向が強いようです。しかし、退職後の男性であっても、散歩や買い物、趣味のアウトドアなど、いろいろな場所で人目は気になるものです。現に最近では、医療用のウィッグを購入する男性の患者さんが増えています。

脱毛を気にするあまり、引きこもりがちになってしまったなどということのないように、ご家族からも外見ケアの情報を提供したり、ウィッグの相談に付き添ったり、親身になることも大切です。

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