数字から見る「がん治療」の今

知っておきたい「奏効率」とは?

治療の有効性を説明する際、よく使われるようになった医療用語に「エビデンス」がある。
「科学的根拠」という意味だが、一般の認知率は約24%(理解率は9%)と、ほとんど理解されていない(国立国語研究所HPより)。
患者にとって「わからない言葉」は治療に対する不安にもつながってしまう。
そのため、がん治療の現場で耳にする言葉の意味を正しく理解することが必要だ。
今回は、自身の治療法を選択する際の指標となる「奏効率」などの意味や見方を知ることでがん治療の「今」を見ていきたい。

 

がん治療における指標の一つ「奏効率」の誤解

奏効率30%は、「その治療で30%の人のがんが治る」という意味ではない。

がん治療の進歩により、患者はさまざまな治療が受けられるようになった。しかしこれは、患者側が治療の効果や費用などを正しく理解しながら、治療方法を判断しなければならない時代が来た、ということを意味している。

たとえば、がん治療の効果を示す指標に「生存率」と「奏効率」がある。ともに、これから行う治療に、どれだけの期待を持てるのかを判断する際に、説明を受けるものだろう。しかし、この二つは全く違う尺度で、治療の効果をみようとするものである。患者はそのことを知らなければ、ただ数字に振り回されてしまうことになりかねない。

「生存率」とは、がんと診断されてから一定期間後に生存している人の割合を示すもの。5年、または10年単位で見ることが多いが、たとえば、5年生存率が90%の場合、5年後、10人に9人が生存しているということになる。しかし、このなかには再発して治療を受け続けている患者も含まれているため、再発することなく生存している患者の割合を示す「無再発生存率」と併せて見ていく必要がある。それに対し「奏効率」は、放射線や抗がん剤治療などの効果を判断する際に使われ、治療後にがんがどれくらい縮小したかを示すもの。たとえば医師から、ある抗がん剤の奏効率を「30%」と説明された場合、図①のような「完全奏効」もしくは、「部分奏効」の状態の患者が全体の30%いたという意味になる。これは、患者が誤解しやすい部分だが、「奏効率」とは、図①が示すように「がんのサイズが縮小する」ことを示す指標であり、「がんが治る」割合ではないということである。

 

 図① 抗がん剤治療による奏効率の定義

抗がん剤治療による奏効率の定義

 

[キーワード] 無再発生存率
治療後の再発を含む「生存率」に対し、「無再発生存率」は、文字どおり再発することなく生存している患者の割合を示すもの。再発・転移に不安を抱える患者側がもっとも必要としている情報と言える。術後5年、10 年の生存率が高くとも、無再発生存率を見ると再発する場合があり、生存率と無再発生存率を併せて見ていくことは、治療法の大きな判断材料になる。

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