知っておきたい「がん治療」の知識

がん治療のセカンドオピニオン。名医がすすめる正しい受け方とは。

監修:瀧澤 憲(たきざわ・けん)がん研有明病院 顧問

2016年11月22日/2018年8月3日更新

自分の病状やライフスタイルに合った、より効果的で安全ながん治療を受けたいと、書籍やインターネットで情報収集する人は多い。情報があふれ、医学が進歩を続ける時代だからこそ必要とされるセカンドオピニオン。
がん研有明病院で多くの患者さんと接し、「今後もがん治療のセカンドオピニオン需要は高まるはず」という瀧澤医師に、患者さんがその恩恵にあずかるための正しいセカンドオピニオンの受け方について聞いた。

セカンドオピニオン(第2の意見)の正しい受け方とは

「不信感があるからセカンドオピニオンで主治医を変えたい」、「もっと有名な医師にかかりたい」といった類(たぐい)の言葉を耳にしたり、発したりしたことはないだろうか。がん研有明病院やセカンドオピニオン専門外来の「がん相談蕩蕩(とうとう)」で長年婦人科がんのセカンドオピニオンを担当する瀧澤先生は、セカンドオピニオンについてもっと正しく理解する必要があるという。

セカンドオピニオンとはその言葉通り、治療方針について主治医とは別の医師の意見を聞くことで、決して病院や医師を変えることを前提に行うものではない。「主治医の治療方針も理解できるが、他の医師だったらどう考えるか」と患者さんが思い、セカンドオピニオンを希望する旨を主治医に相談することで始まる。

終了後はその意見を主治医の元にもち帰り、セカンドオピニオンも加味してもらって治療を続けるのが基本。瀧澤先生は、「病院や医師を変えたいなら、セカンドオピニオンではなく、他の病院に再度初診でかかるべき」と説明する。

例えば、主治医は手術をすすめるが、調べてみると、放射線治療後に手術をする方法や手術をせずに放射線治療のみを行うなど、他にも治療法があることが分かったとする。手術による治療がベストという確証が得られない限り、悩むのは当然だ。

「そこで主治医に『先生に提案いただいた治療法も理解していますが、調べてみると放射線治療との組み合わせや、あるいは放射線治療のみを選択する方法もあることを知りました。このことについて、他の先生のご意見を聞きたい』と希望を伝えます。これを受けて主治医は、ふさわしい医療施設や医師を紹介してくれるはずです」(瀧澤先生)

セカンドオピニオンに関する患者調査グラフ(厚生労働省: 平成23 年受療行動調査より)
セカンドオピニオンについて、必要性を感じていなかったり、その存在を知らないという人もいるが、セカンドオピニオンを受けた人の満足度は高く、約80%は「受けてよかった」と答えている(厚生労働省: 平成23 年受療行動調査より)

 

 

がん治療におけるセカンドオピニオンの必要性

「様々な情報が手軽に得られる情報化社会に生きる人なら、主治医のいうままに治療を受けてもよいのだろうかと疑問に思うのは当然のことです」と瀧澤先生。それで順調に回復すればいいが、思うような結果が得られなかった場合、「もっと調べて、違う治療法を選べばよかった」と悔やむ患者さんも少なくない。

そんな後悔をさせないためにも、セカンドオピニオンは必要で、「5年後、10年後にはもっと増えていくでしょう」と予測する。

がん治療においてセカンドオピニオンが注目される背景には、以下の囲みに示したように、自分の治療に対して積極的に向き合う患者さんが増えている背景がある。「副作用の少ない治療」「仕事や日常生活に支障のない治療」「より効果的な治療」を求めるのは、今や当たり前のことだ。

なかには「セカンドオピニオンを受けたいのだが、主治医に申し訳なくて切り出すことができない」という患者さんもいるが、そうした遠慮は実は必要ない、と瀧澤先生はいう。

「セカンドオピニオンを受ける場合は、より経験豊富な医師や専門医がいたり、設備が整っていたりと、現在治療を受けている病院よりハード面でもソフト面でもレベルが上の施設に行くのが基本です。そうしたセカンドオピニオンは、主治医にとっても有意義な意見や経験が得られることが多く、複数の医学論文を読んだくらいの勉強になることがあるのです」

経験豊富な医師が自分の治療方針に太鼓判を押してくれれば、それが自信となり、患者さんのほうも安心感をもつため、信頼関係がさらに深まったりもする。

セカンドオピニオンは、患者さんの疑問を解決するだけでなく、主治医にとっても診療上意義のあることといえよう。

<セカンドオピニオンが必要とされる理由>
▶治療に対して積極的な患者さんの増加
セカンドオピニオンが必要とされる理由
vol9_suji02▶医療情報が手軽に入手できる環境
患者さんの周囲に情報があふれ、書籍やインターネットなどから情報を簡単に入手できるので、自分が受ける予定の治療より、もっとよい治療が他にあるのではないかという不安や疑問を抱きやすい。

医療レベルの格差
全国どこでもがんの専門医療を受けられるように、医療技術などの格差の是正が図られているが、現実的にはまだまだハード面、ソフト面で施設間格差が存在する。患者さんは、現在かかっている医療施設が、自分の受けるべき治療を十分に行えるレベルにあるかどうかを知りたがっている。

 

セカンドオピニオンを受ける前に、患者さんが準備すること

せっかくのセカンドオピニオンの機会を十分に活かすためには、患者さん側の事前準備も欠かせない。以下の項目のように、集めた情報を整理し、それを主治医に正確に伝え、理解してもらうことが重要だ。


イラスト:集めた情報を整理し、伝える▶自分の病気、病状、治療について理解する

病状や治療方針など、主治医から検査データに基づく説明を受けて理解しておく。それをもとに書籍やインターネット(がん専門の医療施設が発信している情報を中心に)などにも当たり、相談したい内容を整理しておく。

信頼できる人と病気への理解、情報を共有する
自分1人で理解しようとすると解釈が偏ったりしがちなので、家族や友人など、信頼できる人にも同じように情報を共有して病気を理解してもらう。

セカンドオピニオンに一緒に行く人を決める
質問内容を整理して臨んでも、緊張してうまく伝えられないことがある。また、専門的な内容の場合、断片的にしか理解できなかったり、患者さんにとって厳しい内容の場合は、冷静な判断を欠くこともあるので、上記の信頼できる人とセカンドオピニオンを受けるのが理想的。

治療の選択肢について調べておく
初回治療の場合でも、早期か進行期かによって治療は異なり、ケースに応じて多様な治療が考えられる。再発の場合も同様で、1つの治療を選んで単独で行うか、あるいは何かと併用するか、その際の順番はどうするかなど、いろいろな治療が考えられる。そうした治療の可能性については、ある程度、把握しておくこと。

 

セカンドオピニオンは、信頼できる同伴者に同行してもらう

セカンドオピニオンでの質問を適切にまとめるには、まず主治医の提案する意図を理解したうえで、その他の情報を調べ、学習しなければならない。その際、1人ですべてを行うと偏った方向に進みがちなので、信頼できる家族や友人に同じように学習してもらい、自分の考えを客観的、冷静に判断してもらうことが重要。

また、「その人にはセカンドオピニオンに同行して、一緒に医師の意見を聞いてもらってください」と瀧澤先生はアドバイスする。自分1人では、理解が追い付かなかったり、厳しい内容に動揺することも考えられるからだ。そんなとき、冷静に情報を受け止める第三者の存在は重要だ。また、セカンドオピニオンで主治医の提案する治療法とは別の方法をすすめられることもあり、その際の選択にも冷静さが求められる。

「セカンドオピニオンで示された別の治療を受けたい場合には、主治医にその意思を伝えます。主治医が同意し、技術や設備面の条件がそろえば元の病院で治療を受けられますが、難しい場合は、結果として転院になることもあり得ます。いずれにしても主治医の理解、協力を得ることが大切。セカンドオピニオンを正しく活用して、納得できる治療を受けてください。」

 

<セカンドオピニオンに送り出す主治医の役目>
 →患者さんの疑問に対応できる病院や医師を厳選する

vol9_suji04(1)患者さんの目的を理解する

例えば「病理診断について、他の医師の意見を聞きたい」「主治医が提案する治療法以外の治療の可能性を検討したい」など、患者さんがセカンドオピニオンに求めるものを聞いて理解する。

(2)目的に合った病院や医師を紹介する

がん専門病院や、先輩医師のいる病院、出身大学の附属病院など、一般的に主治医は、自分が勤める病院より、ハード、ソフト両面でレベルの高い病院や医師を紹介する。また、「手術より放射線治療を望む」「化学療法を希望する」というのであれば、しかるべき専門医のいる病院を選んで紹介する。

 

<セカンドオピニオンを担当する医師の役目>
 →患者さんの相談を理解してベストと考える解決策を提案する

vol9_suji05(1)相談内容を早く理解する

患者さんがセカンドオピニオンを選んだ理由をまず正確に、早く理解することから始める。

(2)主治医の提案を尊重したうえで、患者さんの質問に答えていく

*もし、患者さんと主治医の間に誤解があれば、それを解くための説明をして、主治医の考えを正確に伝える。
*現状での標準治療について説明する。
*もし患者さんの質問が「最も有効と思われる治療」であれば、可能性のある複数の治療法を挙げて、その中から1つに絞って提案する。それが主治医の提案と一致すれば、元の病院で治療を続けることになるし、もし異なれば、主治医と相談して、病院を変える場合もある。

(3)主治医のいいにくいことを伝えることもある

治癒の可能性、平均余命、モルヒネの開始、緩和ケアへの移行など、主治医が伝えにくいことをセカンドオピニオンで伝えることもある。

(4)セカンドオピニオンの内容を文書にする

主治医だけでなく患者さんにも、セカンドオピニオンの内容を文書にまとめて渡す。

 

vol9_suji07瀧澤 憲(たきざわ・けん)
1947年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業。東京女子医科大学、東京大学分院、三井記念病院などを経て、2005年、がん研有明病院のレディースセンター長兼婦人科部長に。12年、同院顧問に就任する。日本婦人科腫瘍学会名誉会員。(取材時現在)