がん時事通信

男女で違う「がん」との向き合い方とがん患者コミュニティ運営で大切なこと

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がんに罹患することは、身体的にはもちろん、精神的にも非常に負担がかかります。
「家族のこと」「仕事のこと」「お金のこと」――日常への課題が連鎖的に浮上しますが、それでもなんとか向き合っていかなくてはなりません。

そうしたがん患者同士が、お互い不安や悩みを打ち明け、語り合い、情報交換する場として利用されているのが、全国各地に点在する「がん患者会」などの患者コミュニティです。
規模の大小はさまざまですが、大規模なイベントやフォーラムを開催するケースもあり、患者さん自身やご家族が参加しています。ただし、こうしたコミュニティへの参加は女性が多く、一方で男性の参加率は低いとか……。

そもそも、がんとの向き合い方に男女それぞれで傾向はあるのでしょうか。また、どういったコミュニティであれば、誰もが足を運べるのでしょうか。ここでは、がん患者や家族、医療者が立場を越えて不安や悩みを共有し、お互い寄り添いながら対話するコミュニティ「がん哲学外来」を運営される樋野興夫(ひの・おきお)先生にお話を伺いました。

女性の方が前向き、かつ積極的に活動

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――樋野先生は2008年に順天堂医院内に「がん哲学外来」を開設以来、翌年にはNPOを設立、2013年には一般社団法人化するなど積極的にがん患者とその家族をサポートしてきました。
いまでは全国80拠点で、がん患者のコミュニティ「がん哲学外来メディカル・カフェ」を開催するほど活動の輪は広がっています。多くの患者さんと接してきた先生から見て、がんとの向き合い方に男女で違いは見られますか?

 
樋野:私は、これまでおよそ3000人のがん患者、およびご家族と対話を深めてきました。10代~90代と年齢は幅広く、男女比は3:7で女性が多いですね。

参加率に違いがあるのは、女性はコミュニティに対する心理的なハードルが低く、良好な人間関係や仲間を見つけることが上手だからだと思います。がん哲学外来への参加を通じて、ボランティアスタッフとして運営に協力していただくケースも珍しくありません。対して男性は仕事があるので時間が取れない、あるいは競争社会に身を置いていたり社会的使命や役割に縛られるゆえ、病を打ち明けたがらない傾向があります。

しかしながら、悩みを抱えていることに変わりはありません。がん哲学外来では1時間ほどかけて患者さんやご家族から話を聞きますが、病気に関する悩みは全体の3分の1程度で、それ以外のほとんどは職場や家庭での人間関係について。
夫であれば「妻に気遣われながら過ごす沈黙の時間が辛い」「病気をきっかけに閑職に追いやられた」、妻であれば「がんになった途端、夫が優しくなった。『いまさら』という気持ちになる」といったことです。

近年は、社員ががんになった場合のサポートを積極的に行う企業も増えてきており、職場より家庭での問題を口にするケースが圧倒的に多いですね。こうした悩みを抱えたご夫婦が自宅で問題について話し合うことはほとんどないので、次回はがん哲学外来にご夫婦でお越しいただき、私も交えて相手の前で想いを打ち明けられる場を用意するようにしています。そうするとうまく関係改善につながります。

また、そこで大事なのは、カウンセリングの世界でよく言われる「傾聴」ではなく、「対話」だと考えています。患者さんのなかには悩みを言えるような状態ではなく、とにかく来たという方もいますから、「一方的に話せ」ではなく、互いに言葉を交わしながらリラックスしていただき、居心地の良い場にするように努めています。

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