がんとQuality Of Life

早期からの「緩和ケア」には、患者さんのQOL向上や延命効果が期待できます…がんと「こころ」②…

前回は、がんによって患者さんに生じる「こころ」の問題について、その内容や対策について取り上げました。今回は、地域医療の中で他の病院や在宅医療との連携を図りながら、積極的に患者さんの心のケアに取り組む、吉田稔先生に話を伺いました。

一般的に「緩和ケア」というと、がんの治療ができなくなった終末期医療のイメージが強く、その内容は体の痛みのケアが主でした。ところが、2010年、アメリカのマサチューセッツ総合病院の研究チームが発表した論文で、がんの患者さんに早くから緩和ケアを行うと、うつ症状などの訴えが少なく、生活の質が向上して、しかも延命効果まで見られたという結果が報告されました。

 

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こうした緩和ケアには、痛みを抑える医師だけでなく、心と体を診る精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)が深くかかわっていました。精神腫瘍医とは、がんの患者さんやご家族を対象に心だけでなく暮らしのケアまで行う医師で、日本でもこうした専門医を求める傾向にあります。米国の研究結果は、がんという病気がいかに心と深く結び付いているかを示しているといえるでしょう。

新薬や新しい治療法の研究が進んでいるとはいえ、がんはやはり深刻な病気といえます。患者さんの多くは、術後の痛みや抗がん剤や放射線治療の副作用など、身体的なつらさに耐えなくてはなりませんし、治療が長年にわたり、その結果、経済的負担が増したり、仕事や収入面に影響を及ぼしたりすることもあります。

ただでさえ、ネガティブな気持ちに陥りやすくなっているのに、日々、ふくらんでいく病気や仕事、暮らしへの悩みや不安。患者さんやご家族の多くは、このような過酷な日々を過ごされているのが現状です。

紹介したアメリカの研究結果のように、国内でも、身体的な苦痛とともに、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアル(霊的、魂)な苦痛など、様々なつらさを和らげる、初期治療からの「緩和ケア」の必要性が認められ、都道府県のがん診療連携拠点病院には、平成28年度末までに緩和ケアセンターを設置することが義務付けられました。そして、一般病院や在宅医療施設でも「緩和ケア」を受けられる態勢が整いつつあります。

 

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