がんとQuality Of Life

「薬物的支援」と「心理的支援」のバランスを大切にサポートします…がんと「こころ」③…

平 俊浩(たいら・としひろ)
(福山市民病院精神科・精神腫瘍科長)

予期せぬがん告知や手術の後遺症、化学療法による副作用などのダメージから適応障害やうつ病に陥るがん患者さんは少なくありません。15年ほど前から、こうした患者さんをサポートする精神腫瘍科の必要性を感じていたという平先生に、具体的な患者さんの事例から、どういった支援やケアができるのか紹介してもらいました。

 

明らかに精神的ダメージを受けていると分かる人から、自覚のないまま不眠や動悸に悩んでいる人まで、がん患者さんの心の問題に起因する症状は様々。強いストレスを受けても、ふつうは2週間ほどで回復しますが、難しい場合は、精神腫瘍科などで支援を受けるとよいでしょう。適応障害やうつ病を発症すると、日常生活やがん治療にも悪影響を及ぼすからです。

 
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精神腫瘍科を訪れる患者さんのタイプは、心理的支援を求めるタイプと、薬物的支援を必要とするタイプ、大きくこの2つに分けられます。心理的支援とはコミュニケーションで、医師は患者さんの悩みをじっくり聞いて、一緒に考えるというスタンスをとります。患者さんの頭の中でこんがらかってしまった悩みや問題を一緒に整理していく。迷っている患者さんの足元を照らして、安心感を与えることが大切です。

一方、手術の後遺症や抗がん剤治療の副作用による不眠や痛み、しびれなどが精神にダメージを与えている患者さんには薬物的支援が必要で、症状を緩和するための薬を処方します。精神科で出す抗うつ薬には、痛みやしびれを軽減する効果があり、実は神経系の痛みを和らげる治療は、精神科医が得意とする分野なのです。

さらに、患者さんだけでなく、ご家族やご遺族が強い精神的ストレスから立ち直れなくなってしまうこともあり、その治療にも同じように取り組んでいます。

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