注目の治療・研究

極小カプセルに薬物を装填、副作用を抑え、効率よくがん細胞へ送り届ける驚異のナノテクノロジー

2014年2月4日

大きな期待が寄せられる難治性がんの治療効果

現在、このナノテクノロジーを応用した治療法の研究は、転移がん、薬剤の到達効率が低いがん(膵臓がん、脳腫瘍)、薬剤耐性がん、がん幹細胞という4つの難治がんに焦点が当てられている。これらのがんに対する新薬の開発が世界的に進められているが、DDSの戦略は、既存の抗がん剤や核酸医薬を効率よく届けて、最大限の薬効を引き出そうというものだ。

たとえば、既存の抗がん剤の一種ダハプラチンを使った実験では、通常だと投与直後に代謝されてなくなってしまう薬効が、ミセル化することで四十数時間経っても、投与量の10%を血中部位に残せた。さらに、がん病巣への集積率が通常に比べて数百倍に高まったことも判明。また、ナノミセルには免疫治療に有効な機能的物質なども搭載できるため、がん免疫治療への応用研究も進められている。

2013年3月には、2014年の開設を目指し、神奈川県川崎市に「ものづくりナノ医療イノベーションセンター」(仮称)をつくることが発表された。産学官が連携したこのプロジェクトの中心を担う片岡教授は、「均質で高付加価値な製品をつくりたい」と語る。

すでにDDSが臨床で使われているアメリカでは、入院費と副作用対策費が不要になったため、全体的な医療コストが、27%削減されたという。効率性に優れたDDSは、社会全体の医療費の抑制とともに治療効率を高め、患者のQOL向上にも寄与するであろう。

[未来への希望]免疫療法の新たな可能性を切り拓くミセル型ナノデバイス
ナノテクノロジーは、がん免疫療法への応用研究も進められている。そのひとつが、T細胞を活性化し免疫力を高める「インターロイキン-2(IL-2)」を組み込んだナノミセルと、「樹状細胞ワクチン療法」を併用するというものだ。マウスのがんモデルに対する実験により、この方法は従来の療法に比べて、大幅にがんが減少することが確認された。これはカプセルに組み込まれたIL-2 が、血中でゆっくり放出されるとともに、またCTL の増殖する部位であるリンパ節と腫瘍へ移行しやすいことによるものと考えられており、がん免疫療法の効果を高めるものとして大きな期待が寄せられている。

new_emd20140217_2片岡一則(かたおか・かずのり)
東京大学工学部卒業、同大大学院工学系研究科博士課程修了。東京女子医科大学医用工学研究施設助教授、東京理科大学基礎工学部教授、東京大学大学院工学系研究科教授を歴任。現在、東京大学医学系研究科教授、同大ナノバイオ・インテグレーション研究拠点リーダー。(取材時現在)
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