数字から見る「がん治療」の今

知っておきたい「がん緩和ケア」の誤解

早期緩和ケア介入が予後の改善をもたらした
実際、図②が示すように、進行がんの治療とともに、外来で7日以上の緩和ケアの診療を受けた患者の場合、6日以下の群に比べ12.5ヵ月の生存期間の延長が示唆された。

このように、今後のがん治療では、「腫瘍に対する治療」と「心と体の苦痛に対する治療」の2本の柱を、患者の病状に合わせて考えることが非常に重要になってくる。

 

図② 進行がんにおける延命効果も示唆される緩和ケア

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がん緩和ケアは早く始めると延命効果も
近畿大学医学部堺病院緩和ケア科の大塚正友准教授らは、同科へ入院し、死亡した事例(2007年10月〜2011年9月、201症例)から、がん患者に対する緩和ケアの早期かつ定期的な介入がもたらす影響を検討した。緩和ケア外来に7日以上通院できた群(137症例)と、6日以下の群(64症例)に分けてレトロスペクティブ(過去に遡ってデータを解析する方法)に比較。左は時間の経過とともに推移する生存率を示したグラフで、7日以上通院できた群のほうが、生存率が高くなっている(上図)。全生存期間をみても7日以上通院できた群のほうが12.5ヵ月の全生存期間の延長が見られた。これにより緩和ケアの早期かつ定期的な介入が、全生存期間の延長に寄与している可能性が示唆された。

 

[がん緩和ケアを知る①] トータルペインを理解し心と体を同時に治療・ケアする
がん患者と家族が抱える苦痛には、①身体的苦痛②精神的苦痛③社会的苦痛④スピリチュアルペインがあり、これら4つの苦痛を包括して「トータルペイン(全人的苦痛)」と呼ぶ。それぞれの苦痛は互いに影響し合っており、例えば、痛みが強くなると、がんが急に大きくなっているのだろうかなど不安感に苛まれ、精神的苦痛を誘発する。また、家族との生活や仕事が今まで通りにできなくなることに伴う社会的苦痛、さらに「死に対する恐怖」「こんな状態で生きて行く意味が見出せない」などのスピリチュアルペインも発現する。がん緩和ケアでは、この「トータルペイン(全人的苦痛)」を診断すると同時にこれらに対する治療・ケアを行うことでQOL(生活の質)を向上させ、腫瘍を縮小させる治療との相乗効果を目指している。

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