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モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬 痛みの段階や副作用を見ながら使い分ける

モルヒネなどの医療用麻薬の誤解を払しょくし、正しい知識をもつとともにがん疼痛治療で積極的に使ってほしいという向山雄人氏。除痛治療の実情について聞いた。

連綿と連なる神経細胞の中で痛みの伝達物質を伝えるのが「オピオイド受容体」です。前回は、この受容体に結合して痛みの伝達物質に先回りしてブロックするオピオイド鎮痛薬を紹介しました。今回はその種類や使用法についてお話しします。

がん疼痛治療では、世界保健機関(WHO)が作成した「WHO方式がん疼痛治療法」に沿った治療が世界の主流です。その中でオピオイド鎮痛薬は、おのおのの効き目により2つのグループに分けられ、痛みの段階によって使い分けることが推奨されています(下図参照)。まずは、それぞれの段階で使われるオピオイド鎮痛薬について紹介していきます。

 

「WHO方式がん疼痛治療法」の骨子である「WHO三段階除痛ラダー」を示した図。痛みの強さを3 段階に分けて、それぞれの痛みの段階に沿って鎮痛薬を選択する。この図の一番下の段は、薬以外の痛みの治療法として向山氏が加えたもの。
「WHO方式がん疼痛治療法」の骨子である「WHO三段階除痛ラダー」を示した図。痛みの強さを3段階に分けて、それぞれの痛みの段階に沿って鎮痛薬を選択する。この図の一番下の段は、薬以外の痛みの治療法として向山氏が加えたもの。

 

除痛ラダー2段階目で追加されるのはコデインやトラマドールなどの弱オピオイド鎮痛薬です。コデインは服用すると肝臓でその1/10〜1/6がモルヒネに変わり、痛みや咳を止める能力を発揮します。そのため、副作用もモルヒネと同じ、吐き気や便秘などの症状がみられます。トラマドールは中枢系鎮痛薬で、神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬としての作用も併せ持ちます。従来の注射剤に加え、2010年から経口製剤も使用可能になりました。

痛みがとれない場合はこれらの鎮痛薬の量を増やしますが、それでも効かない場合は、強オピオイド鎮痛薬の使用に移行します。

強オピオイド鎮痛薬の主流になるのは、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルです。なかでも基本となるのは、やはりモルヒネです。200年の歴史を持ち、多くの先人たちによって積み上げられてきた研究の成果により安心して使うことができます。

 

「ゆっくり長く効く」徐放剤は、服用回数が少なく、副作用も少ない。それに対して速放剤は「素早く効く」タイプ。
「ゆっくり長く効く」徐放剤は、服用回数が少なく、副作用も少ない。それに対して速放剤は「素早く効く」タイプ。

 

オキシコドンは、モルヒネと同じくアヘンを原料とする薬です。副作用はモルヒネとほぼ同じ、初期の吐き気や便秘などですが、その頻度は若干少ないようです。モルヒネと違い腎臓で代謝されないので、透析中の患者さんにも続けて使用することが可能です。

フェンタニルは、モルヒネ系薬物とは化学構造が異なる合成麻薬です。モルヒネの鎮痛効果の100倍もあるといわれています。この薬の利点は、他の2つに比べて副作用が出にくいこと。国内で使用できるものに注射剤と貼り薬(パッチ薬)があり、飲み薬が使えない患者さんにも有効です。しかし、貼り薬は、皮膚の状態や体温によって吸収量が変わるので、投与量の調節がしにくい薬と言えます。

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