ドクターコラム:がん治療の現場から

第7回「お酒を飲まない人も肝障害に!?近年増加しているアルコール以外の原因とは?」

column_moriyasu07前回はウイルス性の肝炎についてお話しました。
今回は、生活習慣病が引き起こす肝障害についてお話しましょう。

前回の通り、C型肝炎ウイルスに代表されるウイルス性肝炎は、対策が施されたり治療法が確立されたりしたことで、感染者自体は減ってきています。一方で、生活習慣病による肝疾患が増えてきている……というのが現状です。

ひと言に生活習慣病といいますが、これは飲酒や喫煙など不適切な生活習慣の積み重ねにより引き起こされる病気の総称。がんや高血圧、動脈硬化、脂質異常症などさまざまな病気が含まれますが、もちろん肝臓疾患もこの中に入っています。

生活習慣の変化で、肝障害にも変化が

生活習慣病が引き起こす肝障害は大きく2つ。ひとつはアルコール性脂肪性肝炎(ASH:アッシュ)。もうひとつは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)です。
ASHはその名の通り、過度なアルコール摂取により肝障害、脂肪肝を引き起こしている状態です。NASHはアルコールを摂取しないにもかかわらず、主に過食により脂肪肝になってしまっている状態。簡単に言ってしまうと、NASHはお酒をよく飲む人がかかりやすく、ASHはお酒を飲まない人であっても、脂質の多い食事などが原因でかかってしまう病気です。つまりアルコールを飲まない人も、安心はしていられない……ということです。

ひと昔前ですとアルコールで肝臓を壊す人のお酒の飲み方は、肴といってもたくあんのようなお漬物程度、それを肴に焼酎をがぶ飲みする……といったケースが多くありました。つまり、お酒ばかり飲んでいる人は全体的に摂取している栄養価が低い状態で、肝硬変になっていたものです。しかしながら最近では、チーズやお肉を食べながらワインを飲んだりと、飲酒の際に摂取するカロリーが全体的に高くなっている。そうなると、肝生検をして調べてみてもASHもNASHもなかなか区別がつかないという状況になってきています。肝臓疾患も、時代とともに様変わりをしているようです。

肝臓に脂肪が蓄積する「脂肪肝」

健康診断で「脂肪肝」と言われた人はいませんか?
第5回でお話したように、肝臓の重要な役割に「貯蔵」があります。肝臓は脂肪酸からエネルギーの元として中性脂肪を作り出しますが、運動などで消費されるエネルギーよりも作られた中性脂肪のほうが多いと、肝臓に蓄積されていきます。これが「脂肪肝」という状態です。

この状態になると、脂肪性肝炎から肝硬変を引き起こし、やがて肝臓がんを引き起こす可能性もあるのです。脂肪肝の人のうち10パーセントがNASHになるのではないかと言われています。

ちなみにアメリカ合衆国では、肝臓がんの原因として一番多いのはNASHです。日本はまだウイルス性肝炎が7割で、NASHやASHが3割。食生活の欧米化が進んでいますので、この数字はいずれアメリカに近づいていくと考えられます。
ですが、現実には日本では思ったほどASH、NASHの比率は増加していません。
会社での健康診断にメタボリック検診が取り入れられていたり、日常的に肥満や食生活に対して気を遣う機会が増えていることも影響しているのでしょうか。日本人はこういう点では真面目だなあ、と実感します。
といっても、油断は大敵!日常生活の中でなるべく気をつけて、肝臓を労ってあげてくださいね。

moriyasu森安史典(もりやす・ふみのり)1950年、広島県生まれ。75年、京都大学医学部卒業後、倉敷中央病院、天理よろづ相談所病院、京都大学医学部附属病院で勤務。米国エール大学への留学を経て、96年、京大助教授となり、2000年より東京医科大学病院消化器内科主任教授(現職)。最先端技術を導入した肝臓疾患の診断、治療に定評がある。09年より瀬田クリニック東京非常勤医師として、がん免疫細胞治療の診療にも取り組む。趣味はゴルフ。(取材時現在)

東京医科大学病院消化器内科ホームページ
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瀬田クリニック東京ホームページ
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