コラム:がん治療の現場から

第14回「がん患者さんへのメッセージ/がん死亡者ゼロの未来のために」

島田英昭(しまだ・ひであき)
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科教授(食道・胃外科担当)

column_shimada14_01

これまで、消化器がんのトピックを中心に13回にわたってお話をしてきましたが、今回で締めくくりとなります。最後に、がんと向き合うための心構えについて、アドバイスをさせてください。
 

手遅れだと嘆く前に、定期検診に行きましょう

column_shimada14_02
現在、日本において男性は2人に1人、女性はおよそ3人に1人が、がんになると言われています。がんは対岸の火事ではありません。自分自身はもちろん、ご家族など身近な方がいつかかっても不思議ではないのです。

だからこそ、定期的に検診へ行くことは大切で、早期診断からの早期治療が、がんから命を救う非常に有効な手だてになります。とりわけ消化管のがん(食道がん、胃がん、大腸がん)については、発見から治療までのプロセスがほとんど確立されています。

消化管のがんとの闘いは、人類が勝利を迎えようとしていると言っても過言ではありません。それにもかかわらず、検診に行かないで(わざとではないにしろ)進行がんになるまで放置しておき、治癒を難しくするというのは、おかしな話だと思いませんか。いまは年間100万人ががんになり、40万人弱が亡くなるという現状です。膵臓がんや胆道がんのようにまだまだ克服には長い道のりが必要ながんもありますが、消化管のがんで亡くなる方、約11万人については、理論的にゼロに近い数値にまでもっていけるはずです。

そのためにも、50歳を超えた方は、毎年必ず内視鏡検査を、3年に1度は下部内視鏡の検査を行うこと。そうすれば、胃がんや大腸がんが見つかったとしても、命を落とすまでの状況は回避できます。誰だって「がん検診は大事」だと思っているわけですから、「わかっていることはやりましょう!」というだけのことです。
 

生きていれば画期的な新薬に出会うチャンスが増える


いざ、がんになったとしても、パニックに陥る患者さんは減ったように思います。私が医師になった頃は、大腸がんも胃がんも、手術ができないほど進行してしまっていると、余命は3~4か月という場合が珍しくありませんでしたが、いまは、100人のがん患者さんのうち、生きている患者さんが50人になるまでの期間、すなわち生存率が50%までになる「生存期間中央値」の期間は、胃がんは14か月、大腸がんは2年半にまで延びました。

ですから、たとえがんになっても、あきらめず、悲観的になりすぎないでいただければと思います。というのも、それだけの生存期間があれば、その間に保険適用になる新たな薬や治療法に接することのできるチャンスが増えるからです。がん治療は日進月歩の勢いで発展していて、現在では、2年にひとつくらいは、期待できる新薬が保険適用にもなっています。

これから将来、子宮筋腫など良性疾患と同じように、人々ががんを恐れない時代を迎えることが私の夢です。たとえ体内にがんはあったとしても、治療を行えば、命を落とす心配はほとんどないという時代。すでに前立腺がんや乳がんは、そういった段階を迎えつつあります。その他のがんだって、これまでの医学の進歩を考えれば、決して不可能なことではないと私は信じています。

「がんなんて、大した病気じゃない。人生はまだまだこれからだよ」

そうなる日が1日でも早く訪れるよう、私もがん治療に従事する人間として、治療や研究に力を注ぎ、邁進していきたい次第です。

 

shimada_vol.1_02島田英昭(しまだ・ひであき)
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科教授(食道・胃外科担当)。1984年、千葉大学医学部卒業後、同附属病院第二外科入局。87~91年、同大学院医学研究科博士課程(外科系)、91年~93年、マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学外科研究員。97年、千葉大学附属病院助手(第二外科)、02年、千葉大学院医学研究院講師(先端応用外科学)、08年、千葉県がんセンター主任医長(消化器外科)。08年、千葉大学医学部付属病院疾患プロテオミクス寄付研究部門客員教授(消化器外科)、09年10月より、現職へ。胃がんや食道がんの専門医として評価が高い。(取材時現在)

東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/gastro_surgery/index.html