コラム:がん治療の現場から

第9回「肝がん、その診断と治療について 診断編」

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前回までのお話で、「肝がん」という病気について色々お分かりいただけたのではないでしょうか。
今回からは肝がんの「診断」、そして「治療」について説明していきたいと思います。まずは、「診断」についてお話をしましょう。

肝硬変による肝障害度と、肝がんの病期(ステージ)によって決まる肝がん治療

私のような肝がんの専門医のもとに来られる患者さんは、大抵「肝がんである、または疑いが濃いと診断された人」か、「私たちが過去に肝がんの治療を行っており、再発した人」という2パターンに分かれます。
どちらにせよ、まずは詳しい検査をして、そこから治療計画を立てていきます。

肝がんの検査は、「腫瘍マーカー」を主とした「血液検査」、そして超音波検査やCT、MRIといった「画像診断」を組み合わせて行います。正常な肝臓に肝がんが発生することはまずなく、大抵は慢性肝炎から肝硬変に進行してから発生するというのは既にお話しました。

肝硬変による肝臓の障害度はChild-Pugh(チャイルド・ピュー)スコアーという分類で分けられ、軽い方からA、B、Cの三段階に重症度が診断されます。評価は血液検査や、腹水の有り無しなどで行いますが、Aですと、手術療法を含めていろいろな治療法の選択ができます。Bですと、病状に応じて選択していくという感じでしょうか。しかしこれがCになると、そもそも肝硬変により患者さんの平均生存期間が半年以下という状態。がんの治療の選択肢はほとんどなくなってしまいます。

がんの大きさや個数、広がりで決める病期(ステージ)以外に、臓器自体がどの程度障害を受け、機能が落ちているかにより治療法を選択する。これが肝がんの治療が他のがんと大きく違う点の一つです。

進歩しつづける「画像診断」で、沈黙の臓器でも早期発見が可能に

一方、もう一つの診断の柱である「画像診断」。
超音波、CT、MRI……肝がんにおける画像診断は非常に進歩しているといえるでしょう。
なかでも2010年くらいから、よく使用されているのが、EOB-MRIという、造影剤を使用したMRIです。
造影剤を静脈注射すると、20分くらいで肝臓の肝細胞に取り込まれます。しかしがん化した細胞は正常な働きをしていないので、造影剤を細胞の中に取り込まないわけです。すると、造影剤は白く映り、がんの部分だけ黒く映ります。

この手法は、1cm以下の小さな早期のがんでも発見できるというメリットがあります。
また、「造影超音波」という手法は、マイクロバブルという極小……2-3μm(マイクロメートル)という大きさの泡状となった造影剤を注射し、同じように肝臓の中に取り込まれた後、超音波を使用して調べる方法です。どちらも技術の進歩により、従来のCTなどではではわからなかったようながんも発見できるようになってきています。

ちなみに、肝硬変の診断というのは通常血液検査と診察の所見で判断します。しかし、腹水や神経症状、黄疸など目に見える形で症状が出ている場合、かなり進行していることが大半。
「沈黙の臓器」と言われる肝臓。自覚症状がなくとも、健康診断などで要注意の宣告を受けた人は、今すぐ生活改善を始めてくださいね。

moriyasu森安史典(もりやす・ふみのり)1950年、広島県生まれ。75年、京都大学医学部卒業後、倉敷中央病院、天理よろづ相談所病院、京都大学医学部附属病院で勤務。米国エール大学への留学を経て、96年、京大助教授となり、2000年より東京医科大学病院消化器内科主任教授(現職)。最先端技術を導入した肝臓疾患の診断、治療に定評がある。09年より瀬田クリニック東京非常勤医師として、がん免疫細胞治療の診療にも取り組む。趣味はゴルフ。(取材時現在)

東京医科大学病院消化器内科ホームページ
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瀬田クリニック東京ホームページ
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