がん治療と食事

治療中の味覚変化には「基本味」以外の「美味しさ」もプラスする

落合由美(おちあい・ゆみ)国立がん研究センター東病院  栄養管理室長

2014年5月27日

がんの治療中に、味覚変化を起こす患者さんがいらっしゃいます。これは、抗がん剤などの影響で、味覚伝導路に神経障害が起きたり、味物質を受け取る味蕾細胞の機能が低下するためとされています。残念ながらこの症状は、食事療法では治りません。ただし、抗がん剤治療が終われば、多くの場合、2〜3カ月で味覚は元に戻りますので安心してください。

味覚変化のために食欲がなくなり、食事の量が減ると、栄養が不足して体力が低下する恐れもあります。そうならないための食事づくりとして効果的なのは、塩味・甘味・旨味・酸味・苦味といった「5つの基本味」と「味以外の美味しさの要素」を組み合わせるなどして、味のパターンを増やし、患者さんに食べ比べをしてもらうことです。

 

美味しさの要素

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味覚変化の症状は、「本来の味と異なって感じる」、「味を強く感じる」、「味を感じにくい」など、個人で異なる上、治療によって苦手な味の種類が変わる場合もあります。ですから、今回紹介するレシピのように、患者さん自身が味を選べるメニューにして、美味しいと感じる味、違和感がある味を見つけ出すことが大切です。

また、患者さん側も、食事を作るご家族に対し、ただ「まずい」「欲しくない」というのではなく、食べられない理由について、具体的に伝えることが重要です。

かんたんレシピを紹介!
症状に応じて好みの味を選んでおいしくいただける!

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A ダイコンとキュウリのサラダ 〜3種類のドレッシングで味比べ〜

●材料(2人分)

サラダ
ダイコン…80g(1/10 本) キュウリ…2/3本 パプリカ…20g チーズ…20g
①甘味噌だれ
味噌・砂糖…各小さじ1.5 だし…小さじ1
②フレンチドレッシング
酢・油…各小さじ1 塩・コショウ…各少々
③ゴマ酢だれ
酢…小さじ2 すりゴマ…小さじ2/3 砂糖…小さじ1.5 塩…少々

●つくり方

1.ダイコンは皮をむき、1㎝角の棒状に切る(長さは適当)。キュウリは両端を切り落とし、長さ1/3 に切り、縦4〜6割にする。

2.パプリカは、種を取り除き薄切りにする。チーズはさいの目に切り、1と一緒に器に盛る。

3.ドレッシングは各々の材料を混ぜ合わせる。

4.2に3のドレッシングを添え、好みの味を見つける。

 

B 味選丼 〜5味から食べやすい味を見つける〜

●材料(2人分)

ごはん…茶碗2杯
①桜でんぶ…大さじ1.5
②醤油鶏そぼろ
鶏挽肉…60g おろしショウガ…適量 酒…小さじ1/2 醤油…小さじ2/3 水…少々
③ダイコン甘酢漬け
ダイコン…60g(1/15本) 酢、砂糖…各小さじ1 塩…小さじ1/10 刻みユズ…少々
④キヌサヤ…4枚(味付けはなし)
⑤温泉卵…2個(まろやかな味となめらかな食感)

●つくり方

1.醤油鶏そぼろをつくる。鍋にすべての材料を入れ、中火でほぐしながらよく混ぜ合わせる。汁気がなくなるまで炒ったら、ごはんの上に盛る。

2.ダイコン甘酢漬けをつくる。ダイコンは5㎝の千切りにし、酢、砂糖、塩、刻んだユズを混ぜる。

3.キヌサヤはスジを取り塩茹で(分量外)し、流水で粗熱を取る。水気を切り、ごはんの上に盛る。

4.ごはんの上に、桜でんぶ、温泉卵を彩りよく盛り付ける。

 

C ホウレンソウのピーナツバター和え 〜2種類の味付け〜

●材料(2人分)

ホウレンソウ…1/2把 ニンジン…30g(1/7本) ピーナツバター(無糖)…小さじ1.5 だし…小さじ2 醤油…適量 砂糖…適量

●つくり方

1.ホウレンソウは根元までよく洗い、塩茹で(分量外)する。流水で粗熱をとったら水気を絞り、5㎝の長さに切る。

2.ニンジンは長さ5㎝の短冊切りにし、水から茹でて水気を切る。

3.無糖のピーナツバターとだしを混ぜ、1、2を和える。

4.醤油と砂糖を、それぞれ好みの分量加えて調味。二つの味を用意する(一般的には、加糖のピーナツバターに醤油を加えて作る)。

 

今回のメニューの合計

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3種類の料理に、食事を摂りやすくし、がん患者に必要とされる亜鉛が豊富な「アサリのすまし汁」と、口当たりなめらかな食べやすいデザート「ゴマあん入り白玉ポンチ」を加えた。味覚障害がある方は、口腔内の乾燥を伴うことが多いため、汁物を添えると食べやすい。

味覚変化の種類と食事の工夫

①本来の味と違って感じる

●苦く感じる場合は、塩味や醤油を控える。

●アク抜き・臭み抜きをする。

●色々な味付けを試し、旨味・香りを活用する。

<工夫例>
魚…酒で臭み抜きし、香り付け用のしそを巻いて焼く。

野菜…ミルク煮など、まろやかな味に。サラダやお浸しなどは、食べるときに好みの味に調味する。

味噌汁…だしを濃い目にとって旨味を生かし、ミョウガ・生姜などで香り付けする。
②味を強く感じる

●強く感じる味の調味料・素材をさけ、他の味付けをメインに使う。

●食べる時に味付けできるよう、タレや調味料などを別にしておく。

●美味しさの要素をたす。

<工夫例>
魚…酒で臭み抜きし、下味なしで焼いたら、レモン(酸味)を添える。

野菜…お浸しがおすすめ。だし醤油(別添え)で旨味を、かつお節で風味を加える。

味噌汁…だしを濃い目にして旨味を加え、塩分は控えて薄味に。
③味を感じにくい

●香辛料・香味野菜などを使い、味付けをはっきりさせる。

●旨味を利用し、味に深みを出す。

●料理の温度を人肌程度にする。

<工夫例>
魚…マヨネーズなどコクのあるもの、味がまとわりつく、あんかけやカレー粉などを利用。

野菜…ゴマだれ、白和えなどで風味やコクを追加。はっきりした味付けにして、さらに旨味・風味を強化する。

味噌汁…だしを濃く、味噌の量を多くする。ゴボウやキノコ類など、旨味が出る食材を活用。

 

柏の葉料理教室 開催中!
国立がん研究センター東病院栄養管理室(千葉県柏市)主催で、がん治療にともなう諸症状に悩む患者さんやその家族を対象とした「柏の葉料理教室」が開催されています。
開催日:原則として第2・4木曜日
参加費:材料費として500円
申し込み・問い合わせ:国立がん研究センター東病院 栄養管理室
TEL:04-7134-6909(3日前までに)

落合由美 国立がん研究センター東病院栄養管理室長

おちあい・ゆみ●国立東京第二病院・栄養士、国立がんセンター中央病院・栄養係長などを経て、2008年より現職。
『胃を切った人を元気いっぱいにする食事160』(主婦の友インフォス情報社)などを監修。(取材時現在)

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