がん治療と食事

手間を省いて患者さんがご家族と一緒の食事を楽しむ工夫③ 「選べる献立」

監修:千歳はるか(ちとせ・はるか)  国立がん研究センター東病院栄養管理室長

2017年9月13日

治療中のがん患者さんを悩ませるものに薬の副作用があり、「味覚障害」もその1つです。味覚が鈍くなったり、塩味などの特定の味にのみ強く反応したり、本来の味とはまったく違う味に感じてしまうというようなことが起こるのです。しかも、その感覚が日替わりで変化することもあって、昨日は食べられたものが、今日は違和感があって食べられないというケースも見られます。

こういうことを知らずに、「昨日と今日で、そんなに変わるはずがない」と、ご家族が患者さんを責めたり、ときには口論になったりすることもあるようです。患者さんに寄り添うには、味覚障害に対する理解と配慮が必要です。

食事への配慮としては、1つの料理に複数のソースやドレッシングを用意して、味を選べるようにしてみることです。例えば、甘味のあるたれ、スパイスのきいたソース、酸味のあるドレッシングなどを食卓に並べてみる。その中から患者さんは、状態に応じて「これなら食べられる」とか「おいしい」と感じられるものを選ぶのです。いろいろな味がそろうので、ご家族にとっても楽しい食事になるはずです。

患者さんの年齢や持病などを考慮して、減塩食を心掛けるご家族も多いようですが、こうした配慮が必要なのは、食事がふつうにできて栄養が十分に摂れる人の場合です。味覚障害に悩む患者さんが、「もう少し塩味を付けてほしい」というのであれば、それに合わせてあげてください。患者さん用とご家族用のたれを分け、患者さん用のたれには少し強めに塩を振るのも1つの方法です。

優先すべきは、まず「食べて、栄養を摂る」こと。塩分の調整などは、味覚が戻ってふつうに食事ができるようになってからでも遅くはありません。そのへんのことをご家族が臨機応変に考えることも大切です。

 

「選べる献立」を簡単に用意するために

●市販のドレッシングの他、酢やポン酢などにも様々なタイプのものがあるので、何種類か買いそろえておくと便利。

●風味や香りで料理にアクセントを付けたい場合に重宝するのが、カレー粉などのスパイスや、柚子コショウ、梅干し、レモン汁、甘みそなど。

●水分が多かったり、とろみが付いていたりする料理のほうが、口内にとどまる時間が長いために味を感じやすい。「何を食べても味がしない」という患者さんの場合は、片栗粉や介護用増粘剤などを用意しておいて、とろみのある料理に仕上げる。

 

咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、消化・吸収に問題のある患者さんと一緒に楽しむために

「選べる献立」には、鍋物がお手軽。肉や魚は、ご家族用には適当な大きさに切ったものを、患者さん用にはミンチやすり身にしたものを用意する。ほとんどの野菜は火を通せば軟らかくなるので、患者さんは、ご家族よりは長めに火を通して食べるようにする。繊維質の多いゴボウや消化の悪いキノコなど、患者さんに向かない食材については、スープに出た風味を味わうようにする。

 

味覚障害に悩む患者さんのために「3種のソースから選べるしっとり鶏ハム」

しっとり鶏ハムと付け合わせ

■材料(2人分)
鶏むね肉…1/3~1/2枚 ヨーグルト…小さじ2 塩…ふたつまみ 砂糖…小さじ1 コショウ…少々 キャベツ…40g アスパラガス…1本 ナス…1/2個 ミニトマト…4個

■作り方
① 鶏むね肉は観音開きにし、たたいて薄くのばす。

② ①にヨーグルト、塩、砂糖、コショウをまんべんなくすり込み、数時間から1晩程度、冷蔵庫で寝かせる。

③ 広げたラップに②をのせ、両端を残しながら細く巻く。ラップの両端をしっかりと縛り、水気が入らないようにする。

④ ③を水の入った鍋に入れて火にかける。沸騰したら3、4分ゆで、火を止め、蓋をして5、6分蒸らす。

⑤ キャベツとナスは1口大に切る。アスパラガスは根元の皮をむき、4等分に切る。

⑥ ⑤とミニトマトを蒸し器に並べて7~10分蒸す(大きさによって調整)。

⑦ 食べやすい大きさに切った鶏ハムと⑥を器に盛り付ける。

 

3種のソース①
ハニーマスタード

■材料(2人分)
タマネギ…1/10個 粒マスタード…10g ハチミツ…小さじ1/3 レモン汁…小さじ1 オリーブ油…小さじ1/2

■作り方
① タマネギは皮をむき、みじん切りにして水にさらしたら、よく水気を切っておく。

② ボウルに①、粒マスタード、ハチミツ、レモン汁、オリーブ油を入れてよく混ぜ合わせる。

 

3種のソース②
ゴマみそ

■材料(2人分)
みそ…小さじ1 みりん…小さじ1 酒…小さじ1/2 すりゴマ…小さじ1/3

■作り方
① 鍋にみそ、みりん、酒、すりゴマを入れて、混ぜ合わせる。

② こげないように軽く煮詰める。

 

3種のソース③
シャキシャキ梅ドレ

■材料(2人分)
梅干し…1個 タマネギのみじん切り…小さじ1 キュウリのみじん切り…小さじ1 オリーブ油…小さじ1 酢…小さじ1

■作り方
① 梅干しは種を取り除き、包丁でたたいておく。

② タマネギとキュウリのみじん切り、①、オリーブ油、酢を混ぜ合わせる。

<料理のポイント>
3種のソースは、肉や魚にも合う。その際、肉や魚の味付けはしなくてもよいし、するとしても塩だけでシンプルにしたほうがソースの味が引き立つ。

 

柏の葉料理教室 開催中!
国立がん研究センター東病院栄養管理室(千葉県柏市)主催で、がん治療に伴う諸症状に悩む患者さんやその家族を対象とした「柏の葉料理教室」が開催されています。
http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/seminar/about_cooking.html
開催日:原則として第2・4水曜日
開催時間:12:00〜14:00 ※11:50〜受付開始
参加費:材料費として600円
申し込み・問い合わせ:国立がん研究センター東病院栄養管理室
TEL:04-7134-6909(2日前までに)

千歳はるか 国立がん研究センター東病院栄養管理室長

ちとせ・はるか●旧・国立東信病院(栄養士)、国立病院機構東京医療センター(副栄養管理室長)など6カ所の病院を経て、2015年4月より国立がん研究センター東病院栄養管理室長となる。(取材時現在)

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