がんと食

手間を省いて患者さんがご家族と一緒の食事を楽しむ工夫① 「食材を変える」

千歳はるか
国立がん研究センター東病院栄養管理室長

がん患者さんにとって病気との闘いはつらく、ときに長期化することもあるので、いろいろな面でご家族のサポートは欠かせません。その中でも食事のサポートは大きなウエイトを占めます。手術後や抗がん剤治療中の患者さんは、飲み込むことがうまくできなかったり、消化・吸収力が低下していたり、吐き気や食欲不振に悩まされるなど、食事に対して多くの問題を抱えているからです。

ご家族は、患者さんが栄養不足にならないように日々工夫をされていますが、患者さんを支える側のご家族の健康もまた大切です。時間がなかったり、疲れていたりするようなときには無理をせず、調理の手間を省く工夫も必要ではないでしょうか。

そこで、よく紹介するのが、食材を少し変えるだけで、患者さんの分と他のご家族分を1つの鍋で作ることができるメニューです。

今回、患者さん用の食材選びのポイントは、「消化のよさ」。豚の厚切り肉の代わりに薄切り肉と車麩を組み合わせたり、野菜のお麩巻きの芯には硬い根菜を避けて、軟らかい根菜や葉物野菜を選んだりしてみました。

食材を変えるだけですから、仕上がりの見た目は同じです。患者さんの中には、「手術後、おいしいものが食べられない」と悲観的になっている方も少なくありません。豚カツをアレンジした「軟らかお麩カツ煮」は、そんな不満を解消する食べ応えのあるひと品といえます。

また、「自分の食事作りが、家族の負担になっていないだろうか」と心配する患者さんもいらっしゃると聞きます。ご家族が手間をかけずに調理することは、そんな患者さんの心の負担を軽減することにもなります。

<「食材を変える」メリット>
(1)消化器などの手術によって、消化力の低下している患者さんの体への負担を軽減する。
(2)「家族と同じものを食べている」と患者さんが感じることで、食事への満足度が高まる。
(3)用意する食材の一部を変えるだけで、調理工程は同じなので、作り手の負担が少なくてすむ。

<「食材を変える」アイデア>
vol9_food01肉の代わりに車麩や板麩を使う他、ひき肉の代わりに魚や魚の缶詰を用いる。例えばハンバーグの場合、患者さん用には魚の缶詰と豆腐でまとめた軟らかな魚バークを用意。ロールキャベツもひき肉ではなくサケを使う。麺類の中ではかん水が含まれている中華麺の消化がよくないので、そうめんで代用するのも1つの方法。

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