がんと免疫

大腸がん治療の最前線

監修:吉田陽一郎(よしだ・よういちろう)
福岡大学医学部 外科学講座 消化器外科講師

近年、日本人の罹患(りかん)率や死亡率が大きく高まっている大腸がん。九州でトップクラスの手術症例数を誇る福岡大学病院消化器外科では、術前化学療法や、化学療法と免疫細胞治療を併用した「化学免疫療法」といった新たな取り組みにより、大腸がん治療に成果を挙げています。同大学病院で大腸がんについて様々な治療を実践する吉田陽一郎医師に、大腸がん治療の基本から最新治療まで伺いました。

国立がん研究センターがん対策情報センターの統計によれば、1970年代から大腸がんは国内でも急激に増え始め、現在も増加傾向にあります。2011年のデータを見ると、大腸がんにかかる割合は、男性は4位、女性では2位ですが、同センターが算出した2015年の予測値(1975〜2013年の人口動態統計実測値から予測)では、大腸がんは罹患数で1位、死亡者数で2位と、さらに増加しています。

年代別では、50代から急に増え始め、高齢になるほど罹患率が高くなる傾向にあります。

2011年のデータによると、大腸がんの罹患率は、男性は胃がん、前立腺がん、肺がんに次いで4位、女性は乳がんに次いで2位となっている。年齢別では、男女ともに30歳代後半から高まり始め、60歳代以降になると男性のほうが、女性よりも明らかに高くなっている。
2011年のデータによると、大腸がんの罹患率は、男性は胃がん、前立腺がん、肺がんに次いで4位、女性は乳がんに次いで2位となっている。年齢別では、男女ともに30歳代後半から高まり始め、60歳代以降になると男性のほうが、女性よりも明らかに高くなっている。

 

大腸がんの特徴の1つに、初期段階では自覚症状がないことが挙げられます。がんが発生する場所によっても異なりますが、下痢や便秘を繰り返したり、血便が多く見られたり、腹痛などの症状が出た場合には、ステージⅡ以上の進行がんであることが少なくありません。

その一方で、他のがんに比べて検査法(便潜血検査)が確立していることから、比較的早期発見が可能で、早期に発見すれば完治できる可能性の高いがんであることも特徴です。人間ドックなどで行われる便潜血検査では、早期がんなら約50%(進行がんでは90%)の確率で大腸がんを発見できるため、こうした検診を積極的に受けていただきたいと思います。

 

発生場所が違えばその特徴も薬剤の効き方も異なる

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大腸は、盲腸から始まり、上に向かう上行結腸、横に向かう横行結腸、下へ向かう下行結腸、S字状に曲がったS状結腸、まっすぐな直腸、肛門から成り、原因は明らかではないが、日本人は、S状結腸と直腸にがんが発生しやすいといわれている。

 

大腸の長さは約2メートルあり、大きく分けると、結腸、直腸、肛門から成ります。この範囲にできるがんが大腸がんですが、ひと口に大腸がんといっても、盲腸から横行結腸に発生したがんと、下行結腸から肛門までに発生したがんとでは、性質が異なり、抗がん剤の効き方も違うといわれています。

大腸がんは大腸内側の表面をおおう粘膜から発生しますが、粘膜から直接発生するがんと、腺腫という良性のポリープの一部ががん化したものがあります。粘膜にできたがんはゆっくりと大腸壁に浸潤し、大腸壁を超えて周囲の組織へ広がり、さらにリンパ節や他臓器へ転移していきます。離れた臓器に転移することを遠隔転移といいますが、大腸がんは肺や肝臓、腹膜へ遠隔転移しやすく、それが死亡率を高める一因となっています。

肉や加工品の摂取量の増加といった食生活の欧米化が、大腸がんの大きな要因といわれていますが、詳細については不明です。また、同じ大腸がんでも、発生場所によってがんの性質が異なる理由については、遺伝子の相違が指摘されていますが詳細は明らかにされていないというのが現状です。

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